2011 Fiscal Year Annual Research Report
戦前以来のわが国国債流通市場の効率性と国債管理政策
Project/Area Number |
22530319
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
釜江 廣志 東京経済大学, 経済学部, 教授 (60091542)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋森 弘 北星学園大学, 経済学部, 教授 (00285511)
皆木 健男 北星学園大学, 経済学部, 准教授 (70438349)
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Keywords | 戦間期国債流通市場 / 純粋期待仮説 / イベント・スタディ / 預金部 / イールドカーブ / 主成分得点 / ボラティリティ / 市場の効率性 |
Research Abstract |
釜江は、今年度は、明治以来わが国債券市場の主役であった国債の大正・昭和の戦間期における市場構造を計量的に分析した。具体的には、流通利回りが期間構造に関する純粋期待仮説で説明できるかを分析すると共に、イベント・スタディにより市場の効率性をテストした。得られた結果によれば流通市場が効率的であったとはみられない。これは、預金部などの公的機関が参加しており、市場メカニズムに従って売買行動を行う参加者のシェアが必ずしも多くはなく、市場が厚みを欠いていたためであることを指摘した。またこれまでの結果をまとめ、以下の内容の著書として出版した。戦後の国債発行再開時にシ団引受中心の引受・消化の形態がなぜ取られたかを探るべく、戦前の引受・消化がシ団中心であった要因を調べ、このような構造の下で戦前国債流通市場が効率的であったかを計量的に分析した。次いで、戦後の国債流通市場は効率的であったかを分析し、さらに非効率的な国債市場の今後の改善に資する提言を行った。 秋森は、内外の政府国内債務の動向を分析する先行研究の収集にあたるとともに、わが国の国債市場についてデータセットを構築した。クーポン効果といった問題点があるものの、現時点で利用可能なデータとして1-30年の各利付国債の複利最終利回りについて各主成分を抽出し、政府債務の信用リスクや需給要因の影響を受けると考えられる各主成分得点の時系列的な動きについて分析中であり、各種マクロ経済データから抽出した主成分得点とイールドカーブの各主成分得点との関係も分析中である。 皆木は、引き続き市場の効率性に関する先行研究を探索した。市場の効率性分析は国債市場のリスクを計測することでもあり、その代表例たるGARCHモデルの利用可能性を探っている。使用するのは高頻度の国債価格データで、全取引データから時系列分析で利用可能な形式への加工を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
釜江は順調に進展しているが、秋森は、国債個別銘柄の市場価格データ入手先が不明につきそれを調査中であり、皆木は計量分析に使用する高頻度データの加工に修正点が認められ、その修正に時間を要しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
釜江は、国債先物市場などにも視野を広げること、また、イベント・スタディでマクロ変数の予想値形成の新たな方法を取り入れることを検討している。 秋森は、現時点で収集できている利回りデータは利付債の複利最終利回りのみであるため、今後、ブートストラップ法によって各期間のスポット・レートを推計できるよう、国債の個別銘柄のデータ(市場価格、利払月、発行・償還日など)を入手できるか検討している。 皆木は、来年度において計量経済モデルを推計し、その結果を検討して、さらにモデルを再構築してより良い結論を導くことを目指す。
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Research Products
(3 results)