2010 Fiscal Year Annual Research Report
独占形成期ドイツにおける環境闘争:化学工業を例として
Project/Area Number |
22530341
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田北 廣道 九州大学, 大学院・経済学研究院, 教授 (50117149)
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Keywords | 環境史 / 工業化 / 環境汚染 / 住民運動 / 化学工業 / 寡占的大企業 / 環境政策 |
Research Abstract |
本年度は、本研究の研究史上の位置づけを明らかにするための主要業績のサーベイと、化学工業における「生産の科学化」が本格化する1880年以降の史料調査・収集と、2つの作業を中心に行った。 1)研究史のサーベイ:Arnold(1987)、Andersen(1990,1996)、Henneking(1994)らの業績から、1880/90年頃を境に闘争が次第に沈静化する事実を浮き彫りにし、その要因を寡占的大企業の形成と法制度の変化と関連づけて追究する必要を明らかにした。それと同時に、制度経済学との対話から導き出した「政策主体アプローチ」と通底する方法を採用した業績数の増加も確認した。 2)史料調査・収集:2010年7月末~9月半、2011年2月5日~21日ドイツのノルトライン・ヴェストファーレン州立文書館でバルメンに立地する化学企業を対象にして史料調査を行った。イエガー染料会社に加えて、ダール、ヘルベルツ、ヴェーゼンフェルトなどの諸企業にまで視野を広げて調査した。そこで得られた知見は、多いが、主要なものは以下の通りである。 1.20世紀初頭のイエガー会社の認可申請を契機に発生した闘争からは、これまでとは全く異なる審査手続きを読み取れた。一方で、化学連盟の要求に応えるかのように審査が迅速化されたが、同時に、「斯界の権威」の作成した科学的鑑定書に対して、異議申し立ての理由説明が要求されて、一般市民の闘争参加を困難化するとともに、被害・迷惑に決定的影響を与える地元の社会・地理的状況は排除されてしまった。 2.その史的起源は、1883年「行政法」、1884年「執行規則」改訂以降に求められる。ダール会社とヘルベルト会社をめぐる環境闘争から、中央政府の審査過程における科学主義の浸透と現地状況軽視の端緒を読み取れた。
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Research Products
(3 results)