2012 Fiscal Year Annual Research Report
独占形成期ドイツにおける環境闘争:化学工業を例として
Project/Area Number |
22530341
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田北 廣道 九州大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (50117149)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 環境史 / 化学工業史 / 環境闘争 / 科学主義 |
Research Abstract |
本研究では、ドイツ化学工業を舞台とした認可闘争において参加主体(政府、企業、住民、専門家)とゲーム・ルールの双方で、1880年代が大きな分岐点をなすことを明らかにして、「環境史の分水嶺としての第二帝政期」(Uekoetter,2007)と「大工業の序曲」(Bayerl,1994)とに関する所説を別の角度から再確認した。事例研究の主な成果は下記の通りである。 1)法制的・社会経済的ゲームルールの転換点:法制度では、1883年「行政法」により認可審査の窓口が、法律・医療・建築の専門家から構成される合議団から、地方名士からなる地区委員会に代替されたこと、同時に予備審査と意見聴取会に営業監督官が登場して、認可審査の本質的要素であった「公衆衛生」が後景に退いた。同時に、生産の科学化を基礎に寡占的大企業形成に向かう化学工業にあって、「化学連盟」の活動が審査の迅速化に大きく影響を与えるようになった。 2)主体配置の点では、それまで強い発言権をもっていた住民・自治体当局が、次第に影響力を失って国王政府による認可審査の集権化が進展した。それと並行して、認可審査の判断基準は、現地状況(地形・風向や営業y・住宅配置など)から科学技術的成果へと移行していった。この点は、1880年代に新たな職業として登場した「裁判において宣誓の上で証言できる化学者」が、当局から官制の学者より一段下の「民間の化学者」と判断されるなど、専門家の序列化を生み出した。20世紀初頭には学界・産業界双方で「斯界の権威」とみなされる大学教授を頂点に仰ぐ序列化が完成して、科学技術主義の勝利が鮮明となった。 3)それによって営業認可法は、「住民保護」から「産業保護」の道具立てへと、その性格を変えたのである。ここに我々の慣れ親しんだ、政府が企業を法的手段によって規制するという2項図式が完成した。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(5 results)