2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530380
|
Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
高見 茂雄 立正大学, 経営学部, 教授 (50345550)
|
Keywords | 内部資本市場 / 事業部 / 資金融通(吸上・補填) / デットキャパシティー / 有利子負債 / 預金積増 / リーマンショック |
Research Abstract |
本件研究は,日本の上場化学メーカーを対象に「事業部間の資金融通を効率的に行い,有利子負債返済を積極的に行った企業は,リーマンショックにともなう外部資金調達上の困難を比較的柔軟に乗り切った」という仮説を検証すること研究目的とする。研究の初年度である平成22年度では,化学メーカー15社10年の有価証券報告書データを対象に,非効率な事業部への資金補填が企業価値減少につながることを検証した。ただし,データ社数が限定されていたこと,有利子負債返済と預金増加がどうかかわるかについて課題を残していた。 そこで,平成23年度は,化学メーカー114社11年にデータを拡張し,それら課題に取り組んだ。まず,リーマンショックは預金積増行動を促進させ,有利子負債返済を修正させたこと,内部資本市場規模の大きい企業はデットキャパシティーの余裕があり,平常時有利子負債返済を抑制させ外部資金調達を促進させることなどの知見が得られた。これらから有利子負債返済は経営者の意思が反映されやすいのに対し,預金積増は事後的に決まる性質にあるといえる。 次に,分析対象データでは,有利子負債返済が外部資金調達より多くみられること,セグメント間資金融通のうち,資金吸上が資金補填より多くみられること,リーマンショック期では異なったパターンがみられることなどの観察事項がみられた。これに対し,回帰分析手法で因果関係を調べた。結果は,デットキャパシティー仮説,内部資本市場の資金量的確保効果,流動性確保仮説が検証できた。ただし,事業部間資金配分のいわゆる「目利き」効果は不十分であったので,部分的に有価証券報告書記述の中期経営計画事項の事業再編事項で補った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成22年度はデータベースが15社であったが,23年度は114社に拡張して,段階的に分析範囲を広げていること。また,22年度に残された課題である内部資本市場と有利子負債との関係を23年度には解明していること。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は分析範囲を化学業界からさらに電機機器・輸送用機械・鉄鋼・金属など他の業界視野を広げる。これまで得た知見をもとに,本件研究の主題であるリーマンショック以前と以後で企業行動や企業成果がいかに変化したか,内部資本市場はどのように影響を及ぼしたかにつき,動的アプローチから分析を進めて行く。
|
Research Products
(4 results)