Research Abstract |
2011年度の主な研究は、質問紙による量的調査の実施や国際比較調査の実施およびこれまでに実施した調査研究結果のレビューなどであった。特に、本年度実施した量的調査の狙いのひとつは、技術者・研究者のモチベーション要因と阻害要因を新たに明確にし、その解決方法を探索することであった。具体的には、モラールと紛争解決状況の関係を明らかにするために,研究・技術系社員に対して,モラールの状況と紛争解決状況を5点尺度により調査を行った。すなわち、紛争解決状況を,モラールの高いグループ(以降,(H))とモラールの低いグループ似降,(L))で比較すると,(H)は(L)に比べて良好で,(H)と(L)別に平均値を求めt検定を行うと,(H)の平均は3.07であり,これに対して(L)の平均は3.90で,有意水準1%で有意差(t=-5.323,df=126,p<.01)があり,モラールの高いグループにおける紛争の解決度は,モラールの低いグループより高いことが分かり、さらに,モラールを高める要因および低める要因別に,1.仕事に対する年収,2.仕事の進め方の裁量度,3.発明・技術開発等の報奨金,4.仕事内容,5.上司・会社からの評価・承認,の各項目について,研究・技術系社員に聞くと,回答は同じではなかった。すなわち、モラールアップ要因(以降,(U))とモラールダウン要因(以降,(D))があり、(U)と(D)の回答についてFisherの正確確率検定を行うと正確有意確率は0.00で,モラールアップ要因としての回答とモラールダウン要因としての回答は異なった(p<.01)。また,調整済み標準化残差分析において「1.仕事に対する年収」は,モラール低下要因として,「3.発明・技術開発等の報奨金」は,モラール向上要因として,有意水準5%でそれぞれ異なった。一方,仕事に関しては,二要困理論同様,動機づけ要因として重要であることが分かった。報奨金は,報奨としての意味を感じる者にとっては重要な動機づけ要因であるが,年収については,比較すると積極的に動機づけをするというより不満となった場合にモラールを削ぐ要因(モラールダウン要因)としての位置づけが強かった。経済的要因はその意味付けによって影響が異なることも意味していた。モラールへの影響のあり方は一様でなく,モラール向上に直接影響する場合とそうでない場合があり,どのように影響を与えているかを踏まえてモラール管理をする必要があるものの,職場集団のより高いモラールを維持する取り組みとしての個別労働紛争の効率的な解決は,人事管理上,重要な施策であることが分かった。こうした実証的分析と論証は、「活性化のための要因分析・新たな組織均衡等の研究およびミクロレベルでの当事者間の調整システムの研究」における基礎的研究成果となった。
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