2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530546
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
浅野 慎一 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (40202593)
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Keywords | 残留日本人・日系人 / 国民国家 / ポスト・コロニアル / ナショナリズム / 公共圏 / 国家賠償訴訟 |
Research Abstract |
本年度、下記の4点で、当初計画を概ね達成できた。(1)申請者がすでに入手している録音・録画データのうち、未翻訳であった約70名分のそれについて、翻訳・分析を完了することができた。この作業の成果の一端は、2本の論文(「本是同根生 相煎何太急-永住帰国後の中国残留日本人孤児-」、「孤立と差別-永住帰国した中国残留日本人孤児の家族・社会関係-」として公表した。(2)奈良・大阪・兵庫の3府県において,32名の二世・三世・残留婦人に対する面接聴き取り調査・参与観察を実施した。調査結果は、現在、翻訳・整理中である。(3)現在、入手しうる先行研究のうち、当該テーマに直接関係する著作・論文について概ね入手することができ、その約4分の1について批判的検討を行った。特に2005年以降の日本での先行研究は膨大であるが、必要と思われる文献については、ほぼ検討のための基礎的な整理が完了した。(4)国家賠償訴訟・支援策に関する非公開文書を含む諸資料を収集した。特に弁護団の総括文書、および地方自治体での新政策運用に関する資料を初期に想定していた範囲を超えて入手することができた。 本年度の当初計画を超える成果として、次の2点があった。(1)兵庫県在住の44名の中国残留日本人孤児を対象とした調査結果の全体を報告書『日本人として日本の地で人間らしく生きるために』として総括・公刊し、今後の出版に向けた基礎を据えることができた。これは23年度以降に予定していた第一次資料の公刊の第一段階でもある。(2)ソウル大学・Sun-In Kweon教授の依頼により、"Multicultural Japan & Identity Politics"(ソウル大学出版、原書はハングル)に論文「(邦題)中国残留日本人孤児にみる人間発達と公共性」を執筆・収録した。これは、23年度以降に予定していた研究の海外への発信の一環である。
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