2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本人のグラスルーツ・トランスナショナリズムの展開と「場所」
Project/Area Number |
22530569
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
廣田 康生 専修大学, 人間科学部, 教授 (60208890)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 法子 専修大学, 人間科学部, 准教授 (60573300)
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Keywords | 初期トランスナショナリズム / 移民宿 / 方法論的ナショナリズム / 方法論的トランスナショナリズム / 統合 / 共生 / 移民児童生徒 / エスニック・スクール |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本人のグラスルーツな越境移動が孕むナショナルを越える思想と実践、日本社会のナショナリズムの方向性、「統合」と「共生」のロジックを再考することにある。そのため本研究では、I.トランスナショナリズムとは何か、II.日本人の「初期トランスナショナリズム」が提起するもの、III.規代のトランスナショナリズムがもたらすアイデンティティ・ポリティクスと地域政治、IV.日本人のグラスルーツ・トランスナショナリズムと「場所」、という具体的な目次構成のもとで研究を実施するという「研究実施計画」を立てた。この「研究実施計画」に基づき平成22年度は、Iに関して、トランスナショナリズムの理論的検討と、統合概念に関するアメリカの事例について研究分担者藤原との研究会を実施し、IIに関しては主に廣田が、山口県周防大島・沖家室島と宮城県石巻、仙台からの移民実践についての関係者聞き取り調査と資料収集を、藤原が横浜及び神戸の、明治期から戦後まで続いた「移民宿」関係者の聞き取り調査、資料収集、を実施した。成果としては、特にIでは、トランスナショナリズム論の意義を、国民国家の観点からのみ移民や場所を理解する立場-「方法論的ナショナリズムの立場」-を相対化し、移動先との関連で理解することの重要性を再確認し、改めて移民と「統合」「共生」のロジックについて認識し、IIでは、特に廣田は、明治期に石巻からアメリカに渡った移民を越境移動へと導いた当時の社会的動向について仙台出身で渡米熱を支えた「力行会」の嶋貫兵太夫や藤崎三郎助の藤崎商会の活動を関連させることで、また藤原は、1970年代まで横浜での「移民宿」経営者のご親族(=「熊本屋」関係ご親族)と神戸で移民宿と同様の機能を果たした「移民収容所」(後に「移民斡旋所」:現「海外移住と文化の交流センター」)を起点に、「海外渡航用品販売所」「移民宿」関係者にインタビューと資料収集を実施しつつ、当時の移民行動とそれを支える社会的動向のなかに外へと開かれたナショナリズムの動向があったこと、「棄民」と認識されがちな明治期の移民のなかに潜む主体性や、ハワイ、シアトルと出身地の「場所」がどのように繋がれていたかの諸事実を認識した。その他藤原は、現代の移民児童とエスニック・スクールの問題をトランスナショナリズムの観点から解釈し直す作業もした。平成23年度は、ハワイの「移民宿」経営者の関係者に「統合」と越境のナショナリズムの問題を探る予定である。
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Research Products
(4 results)