2010 Fiscal Year Annual Research Report
墓制の変遷からみた家族とコミュニティの変容に関する研究
Project/Area Number |
22530582
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
安藤 喜代美 名城大学, 人間学部, 准教授 (60367745)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮嶋 秀光 名城大学, 人間学部, 教授 (50200176)
伊藤 俊一 名城大学, 人間学部, 教授 (50247681)
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Keywords | 墓制 / 集合化 / お墓の継承 / 流動化 |
Research Abstract |
研究目的の一つとして、名古屋市における墓地の郊外化・集合化の実態調査のために、市内の複数寺院において聞き取り調査を実施した。それによれば、墓地の集合化は一律のものではなく、主に深刻な戦災にあった市域の寺院を対象に、郊外の東部丘陵地帯に寺院ごとの区画を設け、一括して集合移転が実施された。一方、例えば中村区のように、旧市街の中心地から離れた市域の寺院では、そうした移転は実施されず、現在も寺院内に墓地を保有している。 また、同調査に際して、家族の変容に伴う墓制観の変化を捉えることを目的に、寺院と檀家との関係性についても聞き取り調査を行った。その結果、構成員の小規模化や居住地の流動化が進む現代家族においては、寺院との関係にも変化が現れ、それに対応して、寺院側もその在り方を再考すべき時期に来ており、寺院側もそれを強く意識していることがわかった。寺院が従来型の墓石の形式を守りながらも、新しいニーズに対応した納骨堂の新設、本堂内のロッカー式納骨施設の整備など、新形式の永代供養型墓制を模索していることは、こうした意識の反映とみなすことができる。しかし反面、それは、寺院と檀家集団との関係の希薄化を促すものでもあり、それが今日の寺院の課題になっていることも調査から推測された。 墓制の変化と家族構造との関係については、継承者の有無が重要な要因になると仮定し、墳墓をもちながら、子どもがいない中年以降の夫婦に対し、聞き取り調査を実施した。その結果、墳墓の継承問題は、単なる子どもの有無というよりも、彼ら以前の世代がどのような形で家族を築いたのかという点が重要になっていることがわかった。これまであまり指摘されることはなかったが、特に当該世代というよりも、その前の世代が居住地の「流動化」の中で家族を構成した場合、墳墓の継承問題は、いっそう複雑な形で問題化することが明らかになりつつある。
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