2011 Fiscal Year Annual Research Report
社会的ジレンマ場面における手続き的公正の共益的視点導入効果:札幌市廃棄物政策事例
Project/Area Number |
22530667
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大沼 進 北海道大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (80301860)
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Keywords | 社会的ジレンマ / 手続き的公正 / 市民参加 / アクションリサーチ / 環境政策 / 循環型社会形成 / 社会関係資本 / 廃棄物資源 |
Research Abstract |
本研究の目的は、札幌市における廃棄物政策を題材として、手続き的公正が社会的受容に及ぼす影響と、環境配慮行動変容の長期的な追跡調査を行うことである。 昨年度調査結果から、市民参加機会の手続き的公正が社会的受容に及ぼす効果に関しては、新ルール導入前も後もそれぞれ重要だが、一時点での効果は長続きしないことが明らかになった。つまり、計画づくりの段階だけでなく、施行段階、施行後と継続的な参加機会の必要性が示唆された。以上の成果を、国際環境心理学会や日本社会心理学会などで報告した。 また、行動変容のアクションリサーチからは、部外者の介入も適切なごみ分別排出行動を促進するが、介入がなくなるとリバウンドが起こることが示された。同じ居住者が行っているという情報がフィードバックされることの重要性が示唆された。以上の結果は、査読付論文として掲載された。 さらに、当事者性に関する問題に踏み込んだ実験を行った。当事者性が高い場合には利害か必ずしも一致しなくても、異なる利害も熟慮の上施策の内容を評価するが、当事者性が低い場合には内容を深く吟味しない可能性が示された。例えば、ごみ有料化に賛成か反対かといった単純な二分法ではなく、複合的に様々な要件を盛り込んだ制度導入に際しては、当事者性を高めることの必要性が議論された。 しかし現実には、熱心に活動をする人は少数で、ごみステーション管理をはじめ地域の活動に参加できない人も多い。そこで、地域活動が不活発でごみステーションも適切に管理されていないような地域を対象とした調査が必要とされる。800以上のごみステーションの観察調査から、23の特徴的な地域を有意抽出し、その地域在住者を対象とした疑似実験的調査を行った。その結果、ごみステーション管理の適正度と個人の人付き合いの程度、また地域の人の賑わいなどの指標との関連があることが明らかにされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
アクションリサーチの一部は最終年度に実施する予定だったが、二年目の本年度に完了し、結果の一部は査読付論文として掲載された。また、無作為抽出による調査だけでなく、綿密に時間をかけて地域の特徴を捉えた上で大規模な疑似実験的調査を行うことができた。この調査では3200戸以上訪問し600近くの有効回答を得ており、地域コミュニティのあり方、社会関係資本論やコモンズ論など多くの分野に一石を投じ得る実証データを集めたことは研究上も実践的にも大きな前進である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、得られた調査や実験のデータを統計的に詳細に分析し、その成果を国内外の学会や論文誌に報告していく。本研究課題の範囲と年限では、札幌市における廃棄物政策の事例調査以上のことはできないが、廃棄物政策以外の環境政策や環境配慮行動への適用可能性は極めて高く、その展開が求められる。さらに、環境問題を超えて、市民参加のあり方と地域活動を結ぶための方略を検討していくための基礎データを蓄積していくことが重要である。
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Research Products
(21 results)
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[Presentation] Enhancing acceptance of social decisions by procedural fairness and trust ; the moderating role of issue importance2011
Author(s)
Ohtomo, S., Nonami, H., Hirose, Y., Ohnuma, S., Midden, C.J.H.
Organizer
Abstract book of 20th SRA-Europe Meeting, p.129
Place of Presentation
Haus der Wirtschaft, Stuttgart(ドイツ)
Year and Date
2011-06-07
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