2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22530701
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
麻生 武 奈良女子大学, 大学院・人間文化研究科, 教授 (70184132)
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Keywords | 自己 / 1・2歳児 / 人称詞 / 内的状態 / コミュニケーション / 縦断的研究 |
Research Abstract |
平成23年度に実施した研究成果は3つある。1つ目は、科研申請時に未完了であった幼児Uの生後2年目の基礎データの入力を終えたことである。約20のテーマごとに生後2年目のデータファイルを完成させることができた。これは、今回の科研のテーマ「自己の発達」に関する、周辺テーマも含めた総合的な研究を可能にするものと思っている。2つ目は、「イタイ」ということばの獲得をめぐる理論的な問題を、論文「"イタイ"ということばの獲得の謎」[麻生2011中西智海先生喜寿記念文書「人間・歴史・仏教の研究」pp.59-76.永田文昌堂(2011.12.21)]にまとめたことである。またこの内容は、日本理論心理学会[麻生武2011"イタイ"ということばの獲得を巡る諸問題日本理論心理学会第57回大会発表要旨集 p.25(2011.10.30.岡山大学教育学部)]においても発表を行った。3つ目は、幼児Uの生後2年目の基礎データの整理が終わったので、そのデータを活用して、他称詞、自己詞の分析を開始したことである。日本の子どもは、まず一人称を自分の名前で発し始める。しかし、そのまえに「トータン」「タータン」といった他称詞を用い始める。従来はこれらの発話をすぐさま、大人の視点からまさに「トータン」「タータン」といった内容をさすものと安易に考えてきた。しかし、事実は錯綜している。子どもは果たして、「タータン」や「トータン」を名前として用いているのか詳しくデータを吟味していく必要がある。そのような理論的なことも踏まえて、2012年3月の発達心理学会でポスター発表を行った[麻生武2012子どもは「自分の名」をどのように学ぶのか?(その1)日本発達心理学会第23回大会発表論文集p.165.]。以上見えてきたことは、子どもの「ことば」を額面通りに受け取ってはならないことである。たとえ「トータン」と父親に子どもが呼びかけようとも、それは必ずしも我々が考える「お父さん」ではない。その狭間をみるには日常の細かい発話データが必要である。その分析が本研究の次年度の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ローデータの処理が一段落し、テーマごとのデータの分析の段階に入っている。それぞれのテーマに深みがあり、当初考えたより、個々のテーマの分析が大変になってきているが、それは「研究目的」に合致していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては3つのことを行う予定である。1つ目は著書論文として「子ども社会への道:生後2年目における"他者"との出会い」を完成させることである。2つ目は京都国際社会福祉センターの紀要『発達・療育研究』に論文を執筆することである。テーマは、生後2年目前半における、"トータン""タータン"との人称語の獲得過程の分析である。3つ目は、2013年3月に行われる第24回発達心理学会で、前年度の続きのポスター発表を行うことである。さらに自称詞(自分の名前)の獲得過程を自我形成とのからみで分析する作業を進めていきたいと考えているが、これは年度を越えてしまうことが予想される。
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Research Products
(3 results)