Research Abstract |
研究初年度の本年度では,わが国のがん患者会が臨床心理士にどのような協働への期待を持っているかを明らかにするため,調査1として,全国のがん患者会を対象に臨床心理士との協働の有無や今後の可能性を探る質問紙調査を行う予定であったが,調査の理論的枠組みの構築及び質問紙を構成する尺度の日本語版の作成が必要であることが判明した。そこで,本年度は,以下の2つの予備調査を行った。予備調査1では,がん患者会に関する内外の心理学的論文を収集し文献的検討を行った。その結果,院外のセルフヘルプグループとしてのがん患者会には,院内の「専門家主導」のサポートグループに対し,「当事者主導」,「ピア・カウンセリング」,「代替治療」などの独自な概念的枠組みが求められることが明らかになった。予備調査2では,あるがん患者会を対象とした半年間の参与観察に基づくエスノグラフィー法による質的分析を試み,がん患者会のコミュニティ援助機能モデルの構築を行った。また,質的分析に基づき質問項目を作成し,がん患者会のコミュニティ援助機能を量的に測定する尺度構成を試みた。具体的には,がん患者会の会員200名を対象に質問紙調査を行った。その結果,「がん患者会援助機能測定尺度」(17項目,4件法)は,「健康な自分として交流する場」(7項目),「援助が得られる場」(4項目),「病について学ぶ場」(3項目),「友情を深める場」(3項目)の4下位尺度で構成されることが明らかになった。また,本尺度得点及び下位尺度得点とがん患者の心理的適応尺度(ベネフィット・ファインディング尺度日本語版)の尺度得点及び下位尺度得点の間に有意な相関が認められた。次年度には,これらの予備調査の結果を学術雑誌で公表するとともに,この結果を踏まえた質問紙を作成し,調査1を実施する予定である。
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