2011 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における学校と儀式、国旗・国歌との関係に関する史的研究
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22530832
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小野 雅章 日本大学, 文理学部, 教授 (70224277)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇内 一文 日本大学, 文理学部, 助教 (60546266)
冨士原 雅弘 東海大学, 課程資格教育センター教育学研究室, 講師 (30339238)
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Keywords | 学校儀式 / 国旗 / 国歌 / 御大典 / 国民教育奨励会 / 国旗制式 / 内閣官房 / 大日本帝国国旗法案 |
Research Abstract |
本年度は、4年間の研究期間の2年目に該当する。前年度に実施した、先行研究の批判的検討と史料の収集状況の把握を踏まえたうえで、今年度は、昨年度と同様に近代日本における学校儀式、国旗・国歌関係の史料収集とその分析に重点を置いた。史料の調査・収集として、(1)国立国会図書館憲政資料室における帝国議会議事速記録の調査・収集と整理、(2)宮城県公文書館における関連公文書資料の調査・収集と整理、(3)昨年度本格実施を試みたものの不十分のままであった高知県立図書館所蔵の新聞記事の収集を実施した。一方、研究の進捗状況に合わせ、その成果の一部を日本教育史学会例会などで発表するとともに、紀要論文として掲載した。 本研究の過程で、今年度は、近代日本における国旗制式を制定する動きが、1928(昭和3)年の昭和天皇即位の「御大典」を契機に、民間団体である国民教育奨励会により起こったことを明らかにした。明治維新期に「商船規則」や海軍「御国旗」などにより「国旗」が規定されていたが、具体的に何れが正式な国旗であるのかについては、政府は一貫して明確にしてこなかった。その後、1930(昭和5)年に政府は内閣書記官長通牒により、「商船規則」による制式を、正式な「国旗」の制式とする通牒を発するが、これ先述の国民教育奨励会をはじめ、多くの世論が反発し、この後も少なくとも、1930年代を通じて国旗制式をめぐる論争が、政府を巻き込みながら展開されていた事実も明らかにした。これらの事実は、日中戦争開戦後の「日の丸」が日々の生活に深く入り込んでいた時期にでさえ、国旗制式が確定していなかったことを示しているといえよう。 次年度以降は、1930年代の国旗制式に関する論争の内実(実態)を新聞記事や雑誌記事などを交えながら明らかにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を本格的に開始してから2年間になるが、1900年8月の「小学校令施行規則」制定により、三大節学校儀式が定型化し、そこに「君が代」が入るプロセス、さらに戦後教育改革期の御真影下付と学校儀式の挙行状況と「日の丸」掲揚の「普及」過程についての資料を収集し、それらを論文化したことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
三大節学校儀式の定型化と国旗・国歌との関係、戦後教育改革期の学校儀式と「日の丸」・「君が代」との関係については、基本的な資料収集を終え、史料の解読にあたっている。その一部については、論文として公表した。研究の達成度は、おおむね順調に進展していると判断するので、今後も当初の計画通りに推進したいと考えている。 今後、1930年代以降、日本の学校は神社参拝、「宮城遥拝」など、学校儀式の種類を著しく増加させ、国民統合・統制の手段として行く過程を主として1920年代後半の教化総動員運動以後、1937年後半から本格化する国民精神総動員、そして国民学校制度導入の時期に焦点を当てて、史料の収集・分析を進めることにしている。
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Research Products
(2 results)