2012 Fiscal Year Annual Research Report
『世界図絵』、『新・世界図絵』および『最新・世界図絵』に関する総合的研究
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22530836
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
井ノ口 淳三 追手門学院大学, 心理学部, 教授 (00106014)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | コメニウス / 『世界図絵』 / 『新・世界図絵』 / 『最新・世界図絵』 / 挿絵 |
Research Abstract |
研究実績の中から主な成果についてその概要を説明する。「『世界図絵』第3章「天空」の挿絵についての覚書」『追手門学院大学心理学部紀要』第7巻、2013年3月1日、93~102ページ。この論文は、科学研究費の助成を受けて、チェコ、ドイツ、オーストリアなどで調査をした結果、『世界図絵』の第3章の挿絵が回転するものであったことを確かめたもので、その工夫が教材の歴史の上で画期的なものであることを明らかにした。上記の論文は、次の学会で口頭発表した内容に加筆したものである。「『世界図絵』第3章「天空」の挿絵に関する一考察―1658年初版の挿絵を中心にして―」日本教育方法学会第48回大会、2012年10月7日、福井大学。 国際学会での発表には次のものがある。On the internationalization in education in case of the textbook for children ― mainly “The newest orbis sensualium pictus” in the 19th century, 34th International Standing Conference for the History of Education,2012年6月30日、ジュネーヴ大学。この発表は、子どもの教科書を中心にした教育の国際化を主題としたもので、主として19世紀の『新・世界図絵』を分析の対象とした。それらの中には、諸外国の人々の風俗や暮らしぶり、国民性などが記載されているものの、必ずしも正確な内容ではなく、読者に誤解を招く表現も少なくないことを指摘したものである。 以上国際学会での発表も含めて、当初の計画を予定通り進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実施計画」として記した課題は、次の通りほぼ達成できた。すなわち、チェコとドイツを中心にして『世界図絵』の異版本の内容について調査をした。ドイツでは、ハノーファーを拠点にして、オスナブリュック、ブラウンシュバイク、ブレーメン、ハンブルク等で調査を行った。また、ドレスデンを拠点にしてライプチヒとハレでも調査を行った。 さらに、チェコではプラハの国立図書館の他ブルノやシュトラージュニッツェ、ビーラートシュメシュナーなどコメニウスにゆかりのある町でも調査を行った。 学会発表では、海外への発信を重視した。たとえば、2012年6月下旬にチューリッヒで行われた第34回国際教育史学会にOn the internationalization in education in case of the textbook for children mainly “The newest orbis sensualium pictus” in the 19th centuryという表題で発表した。 国内学会でもウィーンとミュンヘンなどでの調査で得られた知見を発表した他、日本教育学会の大会で「コメニウスとエラスムスにおける言葉と事物」に関するラウンドテーブルを企画した。その他、「<迷宮>からの脱出―コメニウス『地上の迷宮と心の楽園』をどう読むか」と題して、総合人間学会第4回関西談話会で報告した(2012年12月8日、京都産業大学むすびわざ館)。 さらに、コメニウスの中期を代表する著作である『光の道』プロジェクトの共同研究者とも協力して研究を進めた。以上のように、当初の目的をほぼ達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度もドイツを中心に『世界図絵』の異版本の内容について調査する。ドイツでは、シュトゥットガルトを拠点にして、ハイデルベルク、フライブルク、チュービンゲン等で調査を行う。これまで一度も調査を行うことのなかった場所であり、調査の成果が期待できる。 2013年6月26日から29日までスロベニアのリュブリャナで開催される「第15回学校生活と学校博物館の歴史についての国際シンポジウム(15th International Symposium on School and School History Museum & Collections)」、および8月22日から25日までラトビアのリガ大学で開催される「第35回国際教育史学会大会(International Standing Conference for the History of Education 35)」に参加し、それぞれ研究発表を行う。すでに発表申し込みの審査を終えて、受理されている。 また、10月に福岡大学で開催される教育史学会第57回大会のシンポジウムにシンポジストとして報告を依頼されている。 10月3日から6日までオランダのナールデンで、オランダ、ドイツ、チェコ3国のコメニウス学会が共同で国際学会を開催する。それに参加し、最新の研究情報を入手したい。 なお、コメニウスの中期の代表的著作である『光の道』の翻訳と研究をすすめているプロジェクトの共同研究者とも引き続き協力して研究をすすめていく。そして最終年度であり、4年間の報告書をまとめる。
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Research Products
(5 results)