2011 Fiscal Year Annual Research Report
植民地中期~末期朝鮮における日本語教育の役割に関する研究
Project/Area Number |
22530841
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Section | 一般 |
Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
久保田 優子 九州産業大学, 国際文化学部, 教授 (20234502)
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Keywords | 教育学 / 朝鮮 / 植民地 / 日本語教育 / 皇民化 / 内鮮一体 / 国語教育 |
Research Abstract |
本研究は、植民地中期から末期の朝鮮を対象に、「同化」(「皇民化」)政策における日本語教育の役割解明を目的としている。平成23年度は、第三次朝鮮教育令期(1938~1940年)を対象に、第一に、朝鮮総督府教育関係者や内地の教育関係者の「国語認識」解明のために、朝鮮総督府発行の報告書、現地雑誌記事、内地教育雑誌の関連記事などを収集・分析した。この時期は、日中戦争開始を契機に、「皇国臣民の誓詞」、「陸軍特別志願兵令」、「創氏改名」など、天皇への忠誠を誓う「皇民化」政策が実施された。教育面でも、第三次朝鮮教育令における国語の要旨は、皇国臣民の自覚を強固にすることであった。教授用語を国語とすることが明記されたことも大きな特徴である。これらを背景に、総督府や内地の教育関係者には、「国語は精神的血液」といった、併合前後の「国語認識」が復活し、さらに、国語は北・南支進出に向けた「東亜語新秩序建設」手段として認識されるようになった。そのために、国語の整理統一という主張が盛んに行われた。第二に、「同化」のために国語科が担った役割解明を行った。『普通学校国語読本』(全8巻)(1930~35年朝鮮総督府発行)の分析の結果、時局を反映して、国家への心得を説く題材が急増し、満州・関東州の紹介や国境警備、戦争での名将など戦争関連の題材が増えた。また、学年があがるにつれて、天皇や国家への心得を説く内容の課が増えている。個人や家庭への心得としては、動物への愛・兄弟愛・親子愛が多い。朝鮮と日本との古来の関係を教える昔話は、以前と同様に掲載されている。結論として、「皇民化」の概念は、「万世一系の天皇の国、日本への忠誠心を持たせること」であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まで、三・一運動直後~第二次朝鮮教育令期~第三次朝鮮教育令期を対象にした、教育関係者の「国語認識」解明および国語教科書に示された「同化」(「皇民化」)概念解明は、ほぼ達成出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、第二次朝鮮教育令期、第三次朝鮮教育令期における教育関係者の「国語認識」と国語教科書における「同化」(「皇民化」)概念は、ほぼ解明されたので、今後は、今年度研究対象の国民学校令期(1941~1945年)の内地および朝鮮の教育関係者の「国語認識」解明と、国語(日本語)教育における「皇民化」概念の解明を行う。さらに、3年次にわたる本研究を総合して、植民地中期から末期の日本語の役割をまとめる予定である。それと並行して、学会発表や論文での研究発表を行う予定である。
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Research Products
(1 results)