Research Abstract |
大阪府内の6校の公立高校(西淀川高校,布施北高校,布施工業高校,西成高校,春日丘高校定時制,福泉高校)について訪問調査(視察と資料収集,校長や進路指導担当教員へのインタビュー)を行った。調査の結果,得られた知見は,以下の通りである。 1.いずれの学校も,偏差値ランクで見れば,「中の下」から「下」に位置する高校であるが,かなりの数の中退者を出している。その幅は,10数名~100名規模にまで及ぶ。 2.高校中退の背景にあるのは,学校の教育力の問題以前の,出身家庭の生活破壊,貧困,小学校時代からの低学力,学習意欲の喪失,高卒の価値の低下(卒業しても就職できない)といった諸要因である。 3.以上から,中退問題へのアプローチは,教育と福祉と就労支援が連携するスキームを必要とするが,そうした実践的取り組みは,ごく端緒的に行われているのみである。 4.同じ偏差値レベルの学校でも,工業高校の場合には,高校中退率も低く,卒業後の就職状況もよい。就職状況の良さが,学習や生活の規律を支えているが,さらに専門高校としてのカリキュラムが,そこに影響を与えている可能性もある。 5.普通高校においても,日本版デュアルシステムによる継続的な職場体験(布施北高校),進路・就職指導(西淀川高校),労働行政とも連携した労働者権利教育(福泉高校)などを軸としたキャリア教育が,在校する生徒の学習・生活意欲の向上に寄与している可能性がある。
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