Research Abstract |
本研究は,1945年から現在に至る期間の日韓音楽教育関係史を,総合的にまとめることを目的とする。具体的には,1945年8月から現在までの韓国の音楽教育史を整理し,その上で,音楽教育をめぐる日韓両国の関わりを,音楽教育の基礎研究や研究・教育交流事例を通して明らかにし,関係史の構築をめざす。 平成23年度は,9月27日~30日に韓国で資料収集及び聞き取り調査を実施した。韓国では2007年に改訂された教育課程に準拠した新しい教科書が,2010年度から学年毎に順次,使用されている。2011年度は,新たに初等学校(日本の小学校に当たる)の第5,第6学年,中学校の第2,第3学年で使用開始となった。これらの学年はいずれも検定教科書である。検定を受け合格した音楽科の教科書は,たとえば初等学校第6学年の5社,中学校第1学年の15社16種類のように,日本と比較して非常に多い。日本の音楽科の教科書(検定教科書)は,現在小学校が3社,中学校が2社である。 本研究では,韓国の新しい音楽教科書及び一部の指導書における,内容や教材,指導のねらい等について,特に日本との比較や日本の歌や音楽の取り扱われ方に注視しながら分析を行った。この研究の成果が,2012年3月発行の『音楽教育実践ジャーナル』vol.9 no.2に掲載された「交流の時代における日韓の音楽教科書の現在」である。 また,成果発表の一環として,2012年3月15日~18日にカナダ・トロントで開催されたAssociation for Asian Studiesの2012年大会に参加し,日韓音楽教育関係史における1940年代から現在につながる事例研究として,Overcoming Colonialism : Japanese and Korean Reconciliation through Music Theatre in the Mid-20th Centuryと題した口頭発表を行った。これは,Colonialism and the Negotiation of Cultural Identities : Music in Japan, Singapore, and Hong Kongと題し,採択されたパネル発表を構成する3つのpaperのうちの1つである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画に沿って,資料収集,分析・検討,そして成果発表を行っている。特に,カナダ・トロントで開催されたAssociation for Asian Studies2012年大会における口頭発表は,Colonialism and the Negotiation of Cultural Identities : Music in Japan, Singapore, and Hong Kongと題したパネル発表の一環として,審査を経て採択されたものであり,当研究が一定の評価を得ているものととらえている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題には「-1945年8月以降から現在までを中心に-」という副題を付けている。「現在まで」とした場合,日本の学習指導要領に相当する韓国の教育課程や教科教育課程がここ数年頻繁に改訂が示され,日々更新される最新情報を把握し,分析・検討することに追われている点も否めない。研究全体の進捗状況が遅れているというほどではないものの,めまぐるしく変化する韓国の音楽科教育事情と新たな資料・情報を的確にとらえつつ,日韓音楽教育関係史を総合的にまとめるために,研究全体をさらに冷静に鳥瞰していく必要性を感じている。
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