Research Abstract |
自閉症者の言語や会話の指導法として「スクリプトおよびスクリプト・フェイディング法」(以下,S・SF法と略す)が成果を挙げ注目されている。この方法の特徴は,侵襲的でない言語モデルの提示法でありながら確実に言語行動を喚起することができ,会話スキルの習得が見込める点である。この指導法の課題は,自閉症者が(1)複数の人が役割を分担する共同活動の中で言語行動の始発を促す,より効果的なフェイディング手続きの開発,(2)S・SF法の特徴を生かした新たな般化促進法の開発(3)スクリプトを自らが管理し活用する自己管理法の開発,が挙げられる。今年度の研究計画は,これら3つの課題の内,(1)複数の人が役割を分担する共同活動の中で言語行動の始発を促す,より効果的なフェイディング手続きの開発である。 一事例の実験デザインを使用し,S・SF法の効果を検証するために使われた。対象者はA君(中1),B君(中2),C君(中2)の3名であった。A君には,制作活動,ババ抜き,おやつ,始めの会,終わりの会5つの活動の中で,21の標的行動を指導した。B君とC君には,カラオケ,ジェンガゲーム,携帯電話などにおいて,標的行動の始発を促進することとした。その結果,S・SF法により,促進されることが確認できた。また,同時期に,学校や家庭での会話行動を評価したが,A君は学校において会話の頻度が著しく増加したというデータを得ることができた。 スクリプトの提示法としては,液晶画面による提示,活動スケジュールに貼付した提示,複数のスクリプトが書かれた用紙の提示を試みた。いずれにおいても,発話が認められ,有効性が確認できた。従って,スクリプトの提示法に選択肢が広がったことで,よりいっそう効果的な介入が可能となったと考えられる。
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