2011 Fiscal Year Annual Research Report
障害児の就学・進学・卒業時における移行支援システムの構築-市町村ベースの体制整備
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22531067
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
渡部 昭男 神戸大学, 大学院・人間発達環境学研究科, 教授 (20158611)
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Keywords | 教育学 / 特別支援教育 / 教育行政 / 就学・進学・卒業 / 移行支援 / 市町村教育委員会 / 就学指導 / 実態調査 |
Research Abstract |
2010年12月24日に出された中央教育審議会「特別支援教育の在り方に関する特別委員会」(以下、特特委員会)の「論点整理」は、我が国の教育政策がインクルーシブ教育の方向に進むことをはじめて明示した中央文書である。そして、従来の「就学指導委員会」を「就学支援委員会(仮称)」に改め、就学時に単発で行われる就学指導から幼児期から就学後に及ぶ継続的な就学相談・修学支援への転換を打ち出している。そこで、「障害者権利条約」「インクルーシブ教育」「就修学システム」が諸外国でどのように進展しているのか押さえる作業を追加した。具体的には、第一に、真城知巳(千葉大学/イギリス)、山下晃一(神戸大学/アメリカ)、是永かな子(高知大学/スウェーデン)、片岡美華(鹿児島大学/オーストラシア)を招いて研究会を開催し指導助言を得た。そして、日本教育学会第70回大会(千葉大学)においてラウンドテーブル「インクルーシブ教育に向けた就修学システム-中教審特特委員会の提言に係る諸外国からの示唆-」を開催した。第二に、特特委員会の委員長を務める宮崎英憲(東洋大学)及び清水貞炎(元宮城教育大学)・玉村公二彦(奈良教育大学)を招いて、日本特殊教育学会第49回大会(弘前大学)において準備委員会企画シンポジウム「特別支援教育及びインクルーシブ教育の在り方-障害者権利条約の諸原則とのかかわりで-」を開催した。第三に、2010年度の市町村調査に関しては、日本特別ニーズ教育学会第17回大会(福岡教育大学)において「就修学支援システムの検討-1988~2010年度の比較分析-」のタイトルで発表した。特徴的な変化として、1988年度には大多数が「心身障害児就学指導委員会」を名乗っていたが、2010年調査では名称変更が少なからず確認できた。すなわち、1)「心身障害児」について削除するか「障害児」「障がい児」「障害児等」「児童生徒」ないし「特別支援教育」とする、2)「適正」について削除する、3)「就学指導」について「就学支援」「就学相談」としたり「特別支援教育推進」とする、の3傾向が認められた。また、「入学支援ファイル」「入学支援リーフレット」「入学支援シート」「就学支援シート」等の導入が現場で進んでおり、「5歳児健診(相談)→年長組の1年間を通じた相談支援→就学指導へ」という繋いだ取り組みを築きつつある自治体もあった。第四に、障害青年を含む大学教育保障に関して大学評価学会第9回大会(早稲田大学)においてシンポジスト報告を、鳥取大学附属特別支援学校の高等部専攻科の実践成果を含む移行支援に関して神戸大学附属特別支援学校第20回教育研究協議会において基調講演を、インクルーシブ教育の政策動向に関して兵庫県特別支援教育諸学校長会で招待講演を、それぞれ行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中央教育審議会「特別支援教育の在り方に関する特別委員会」の論点整理が2010年12/24に出されたことを受けて、研究計画に急遽、この論点整理の検討を組み入れた。そのことによって、研究に深みと広がりが生まれた。学会でのラウンドテーブルやシンポジウムの開催、2010年度調査の結果発表など、順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
1)2011年度までの成果をまとめて『日本型インクルーシブ教育システムへの道(仮称)』を三学出版から出版する。/2)2010年度に行った全国市町村調査の結果を一覧冊子にして各自治体に配付し、研究成果を現場に環流する。/3)日本教育学会第71回大会(名古屋大学)においてラウンドテーブルを開催し、広く意見交換する場を設ける。/4)中央教育審議会「特別支援教育の在り方に関する特別委員会報告」が出されるのを待って、再度の全国市町村調査を行う。1988年度-2010年度-2012年度調査の対比も行いながら「就学指導から就学相談・修学支援への転換」を明らかにする。/5)日本特別ニーズ教育学会第18回大会(高知大学)等で研究成果の発表を行う。/6)3年間の研究の蓄積を踏まえて最終年度としてのまとめを行う。
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Research Products
(5 results)