2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22540072
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
印南 信宏 新潟大学, 自然科学系, 教授 (20160145)
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Keywords | リーマン幾何学 / 測地線 / 最短ネットワーク / 曲面上の幾何学 / 測地流 / エルゴード性 / 円のリヤード / 最小シュタイナー木 |
Research Abstract |
本年度の目的は,測地線の幾何学を力学系理論と結び付けて考察することであった。特に,測地流の性質を底多様体の言葉で記述する方法について研究することであった。似下のことが明らかになった。体積有限な多様体の測地流は,ポワンカレの再帰定理によって,単位接束上のほとんどすべての点に対して,再帰的になっている。この性質を元にして,底空間の測地線の挙動に対して,二つの条件を考えた。一つは,位相的な混合性に類する性質で,もう一つは,エルゴード性に関する性質に対応している。前者については,2次元回転トーラスに対しては成立することを示すことに成功した。後者に対しては,エルゴード分割をしたときに,その成分を不変なレベルとする第1積分が存在する力学系と密接に関係することが分かり,極の存在の問題と関係させて成果を得た。力学系理論において,積分可能性とエルゴード性は全く異なった性質であるが,測地流を底多様体の測地線の幾何学と見るときに,これらが関連したことになる。特に,エルゴード的な性質において,平坦トーラスの役割が明確になった。また,長年解決することのできなかった平面凸ビリヤードにおける底エルゴード性による円の特徴づけに成功した。 離散数学への応用としては,前年に引き続き最短ネットワーク問題を扱った。特に,多角形内の最小シュタイナー木問題に関して,次の結果の証明の修正を行った。非負曲率アレキサンドルフ多角形曲面内の最小シュタイナー木に対して,最小全域木の長さが同じで,最小シュタイナー木の長さが大きくならないユークリッド平面にはめ込まれた多角形が存在する。現在,数学の専門誌に投稿中であるが,査読委員から大変興味深い結果であるとの評価を頂いている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
問題の提起が途切れない。また,順調に解決して成果が出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
回転トーラスの測地流は,底多様体上で位相的な混合性を持つことを示せたが,どの程度一般の場合にも同じ性質が成り立つか研究する。普遍空間上で,測地ループが存在しないならば正しいのではないかと考えている。 曲面上の最短ネットワーク問題を考えるとき,曲面のボロノイ分割が重要な役割を果たすようになると予想される。ボロノイ分割に使われる境界線は,2点の二等分線なので,曲面上の二等分線の研究を開始する。2点までの距離関数の差にモース理論的な考察が有効であるように思われる。
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Research Products
(2 results)