2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540072
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
印南 信宏 新潟大学, 自然科学系, 教授 (20160145)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | リーマン幾何学 / サブ混合性 / トポノゴフの比較定理 / 曲面のボロノイ図 |
Research Abstract |
本年度の研究目的は、リーマン幾何学、物体の表面などのような境界付きリーマン多様体を貼り合わせてできる多様体やアレキサンドルフ幾何学で発展してきた方法を用いて測地線の幾何学を研究することであった。本年度の成果は以下の通りである。 昨年度は、回転トーラスの測地円の漸近的挙動についての混合性的な性質の研究とサブエルゴード的な性質についての研究成果をまとめ発表した。これらは、測地流の研究として、従来は単位接球上の性質として扱われ、その際は、負曲率あるいはそれに相当する条件の下で研究されていたが、底空間の性質として捉えることで、より一般的な空間の性質として記述することができた。今年度は、回転面でないトーラスに対しても同様の性質が成り立つことを確信できるまでに研究が進んだ。 放射曲率を用いたトポノゴフの比較定理を完成させ、その応用として、放射曲率を用いた新しい球面定理の証明に昨年度成功し、今年度論文として発表した。さらに、距離関数の臨界点理論を用いた球面定理を臨界点を結ぶ最短測地線の角度的分布の立場から見直し、球面定理やユークリッド空間と同相になるための条件を提案した。トポノゴフの比較定理を一般化する際に考案した参照写像の概念が有用であった。 ボロノイ分割を与える境界線は、2点までの等距離集合(二等分線)である。このためボロノイ図の研究には二等分線を研究することが必須である。二等分線を調べるために、2点までの距離関数の差と曲面の幾何構造について研究した。モース理論的な議論がうまく適用でき、距離関数の差のレベル集合の変化とオイラー数の関係について興味ある発見をした。昨年度までに得られたこれらの結果を総合して、閉曲面のボロノイ図におけるボロノイ領域が円板と同相になるための条件とミニタイプ距離関数の臨界点と位相の関係の研究をまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題の提起と解決のアイデアの提案が途切れない。また,順調に解決して成果が出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
トーラスの測地流は,底多様体上で位相的な混合性を持つことを論文として発表できるまでに証明のアイデアを精査する。 球面定理と有限性定理と多様体の収束定理が密接に関係している。現在、最短測地線の角度的分布によって球面定理の証明に成功したので、有限性定理や多様体の収束定理への応用を考察する。 曲面のボロノイ図において、ボロノイ領域が円板と同相になる母点の最小個数は位相不変量であろうとの予想でスタートした研究であったが、現在まで解決していない。そこで、今までの方法とは異なるアプローチを試してみる。すなわち、曲面の最小個数による三角形分割から、ボロノイ図を構成する方法について考察する。
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