2012 Fiscal Year Annual Research Report
散逸系のパターンダイナミクスにおけるハミルトン構造とその周辺
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22540131
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
桑村 雅隆 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (30270333)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 微分方程式 |
Research Abstract |
生物の形態や化学反応系は、エネルギーや物質の消費と流入のバランスによって動的に維持されているシステムと考えられることから、一般に「散逸系」とよばれている。昨年に引き続き、本年度も散逸系におけるパターンダイナミクスに現れるハミルトン構造そのものの研究よりも、生態学や生物の形態形成におけるモデル方程式を研究することに重点をおいた。生物の形態形成における研究として、ショウジョウバエの小腸幹細胞の増殖と分化のメカニズムを力学系理論と数値シミュレーションの観点から理解することが挙げられる。1つの幹細胞は増殖し不等分裂することにより、1つの娘幹細胞と1つの前分化細胞になる。前分化細胞は内分泌細胞もしくは最終分化細胞のいずれかへ分化する。この細胞増殖分化のプロセスはNotch シグナルとWntシグナルによって制御されており、数学的には6変数の常微分方程式系で記述されると考えられる。本研究では、拡散性のWntシグナルタンパク質が小腸幹細胞系の外部で生産されているという仮定の下で、小腸幹細胞系が恒常的に維持されるための条件を考察した。この研究結果は J.Biol.Dyns. vol. 6. pp.267-276 (2012)に掲載された。この結果と2年前の J.Biol.Dyns. vol. 4. pp.248-257 (2010)に掲載された結果を比較することにより、ショウジョウバエの小腸幹細胞系の恒常性維持のメカニズムを理解するための手がかりを得ることができると思われる。本研究の結果は、日本応用数理学会2012年度年会(2012年8月28日~9月2日、稚内全日空ホテル、北海道)においても口頭発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果は毎年、学会発表と雑誌論文において公開されている。このことは、研究の目的がおおむね順調に進展しているということの明白な証拠であるといえる。これ以外の根拠によって、研究の目的が達成されているかどうかを客観的かつ公平に判断することはできないと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はおおむね順調に進展しているため、これまでの方策をそのまま実施していくことによって、確実に研究は推進できると予想している。近年の生物学・生態学の発展の成果にもとづき、新しいモデル方程式を提案することは散逸系のパターンダイナミクスの理論研究にも貢献すると思われる。今後は、捕食者の休眠を考慮した被食者-捕食者モデルに空間的な拡散効果を取り入れた反応拡散方程式モデルに現れるチューリングパターンの研究を進めたいと考えている。現時点では、捕食者の休眠はチューリングパターンを生み出すのに直接的な影響をもっているのかいないのかは未解明であり、分岐した周期進行波が実際に観測可能であるかどうかもよくわかっていない。これらは、今後取り組むべき重要な研究課題である。なお、研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点はないと予想される。
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Research Products
(2 results)