2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540186
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高崎 金久 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (40171433)
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Keywords | 溶解結晶模型 / リーマン・ヒルベルト問題 / アブロヴィッツ・ラディック階層 / 戸田階層 / 無分散極限 / フロベニウス構造 / 準古典展開 / BD型可積分階層 |
Research Abstract |
1.ランダム分割の研究の新たな題材として,中津了勇氏と共同で,分割の2次カシミール値のqべきによって離散的に変形された溶解結晶模型の熱力学極限を考察した.ランダム行列の場合にならって熱力学極限をある種のリーマン・ヒルベルト問題に翻訳し,その解を具体的に求めることができた.特に離散的変形パラメータの値が1の場合には,この解はアブロヴィッツ・ラディック階層との密接な関係を示しており,一般の場合にも背後に2成分戸田階層の簡約系を伴っていると思われる. 2.無分散戸田階層の有限変数簡約の新たな例や既知の例の拡張を見出し,それらに内在するフロベニウス構造なども考察した.これらは特別な場合としてアブロヴィッツ・ラディック階層の無分散極限も含んでおり,今後ランダム分割や位相的弦理論と可積分階層の関係を探って行く上で重要な題材を提供する. 3.武部尚志氏と共同で,戸田階層の準古典展開(h-展開)をもつ解の一般的記述を与えた.これはKP階層に関して以前行った研究の戸田階層への拡張であり,戸田階層の数理物理への応用において基本的な意味をもつ. 4.A.Orlov氏,塩田隆比呂氏と共同で,B型およびD型可積分階層に対してパフィアンで記述されるさまざまな解を見出した.これらはパフィアンと関係するランダム行列・ランダム分割模型や超幾何函数・球関数論に応用できるものと期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
溶解結晶模型は今年度の研究の主要な対象であり,2次カシミール値のqべきによって変形された模型の熱力学極限が解けたことやアブロヴィッツ・ラディック階層との関係が見えてきたことは期待以上の成果である.フロベニウス構造の研究やBD型可積分階層の研究も着実に進展している.他方,組合せ論的構造との新たな関連を探る研究はまだ準備段階にある.また,ミッタハ・レフラー研究所の可積分系研究プログラムに参加する計画は諸般の事情によって中止を強いられた.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題においてアブロヴィッツ・ラディック階層の重要性が増しており,戸田階層とともにさらに研究を進める必要がある.他方,溶解結晶模型の熱力学的極限に関わるのはこれらの可積分階層の無分散極限であり,可積分階層そのものの役割を明らかにするためには量子トーラス代数のシフト対称性などを利用する必要がある.シフト対称性に関しては,最近若干の問題点が明らかになり,多成分系への拡張の問題も含めて再検討が必要である.さらに,今年度はこのような研究の対象を位相的弦理論の位相的頂点模型にまで広げる予定である.また,最近非平衡統計力学の可解模型としてオコネル過程と呼ばれる確率過程模型が関心を集めているが,そこではRSK上対応などの組合せ論的構造が重要な役割を果たすようであり,新たな題材として注目して行く.
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