2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540210
|
Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
青木 貴史 近畿大学, 理工学部, 教授 (80159285)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 優 近畿大学, 理工学部, 講師 (10510026)
|
Keywords | 完全WKB解析 / 幾何微分方程式 / 超幾何関数 / 特異摂動 / Parametric Stokes現象 / Voros係数 / Stokes曲線 / パンルヴェ階層 |
Research Abstract |
1型パンルヴェ階層に属する微分方程式系のインスタントン解構成について、本年度は昨年度までの成果を論文としてまとめることに重点を置いた。膨大な計算が必要となるため効率良く記述する工夫に時間をかけた。ヴォロス係数の計算については大きな進展が得られた。すなわち大きなパラメータを持つ超幾何微分方程式に対してヴォロス係数の具体形を求めることに成功した。ヴォロス係数の満たす差分方程式系の導出に関しては昨年度の研究で1つのパラメータに関して成功し、残りに関しても概ねの方針は得られていた。その方針に従って本年度の研究では3つのパラメータに関する超幾何微分方程式の昇降演算子を活用してそれぞれのパラメータについて差分方程式を導出した。続いてこれを満たす大きなパラメータの逆数の形式的冪級数でパラメータと併せて斉次なものの構成を試みた。ウェーバーの微分方程式やホイッタカーの微分方程式の場合には本質的なパラメータは1個、あるいは本質的に1個に帰着するので適当な変数変換によって差分方程式はボレル変換された関数方程式の割り算により解ける。しかし超幾何微分方程式の場合は本質的にパラメータが3個あるために単純にボレル変換するだけでは割り算に帰着できない。そこで本研究では差分方程式をテイラー展開により形式的無限階微分作用素と見なすことを考えた。その結果、差分方程式を解くことが無限階微分作用素の形式的逆を作用させることに置き換えられ、ヴォロス係数が満たす差分方程式系を解くことに成功した。同時にヴォロス係数にベルヌーイ数が現れる理由を明快に説明することができた。求められた超幾何微分方程式のヴォロス係数は、ウェーバー方程式やホイッタカー方程式に対して知られた形の自然な一般化になっていることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した1型以外のパンルヴェ階層に対する研究には至らなかったが1型に対する結果をまとめて出版する目処が付いた。また、超幾何微分方程式のヴォロス係数に関しては、予想よりも大きく進み、具体的表示に到達できた。現在の所、パラメータの範囲に制限が付いているが本年度の目標には到達できたと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
ヴォロス係数の導出についてはパラメータに対する条件を一般的にすることが当面の目標となる。ストークス幾何が退化しないすべての場合について同様の計算が可能であることは予想されるので、それを実行する。同時に得られた発散級数表示のボレル和を各領域で求める。これにはまずボレル変換の計算が必要であるが、本年度の計算で得られた形はウェーバー方程式の場合の拡張になっているのでボレル変換は同様の手法で計算可能である。従ってボレル和の計算は時間の問題であると思われる。1型以外のパンルヴェに対する研究は何型を対象とするかを含め再検討を行う。
|
Research Products
(5 results)