2011 Fiscal Year Annual Research Report
擬軌道尾行性によるホモクリニッククラスの特徴付けに関する研究
Project/Area Number |
22540218
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
酒井 一博 宇都宮大学, 教育学部, 教授 (30205702)
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Keywords | 力学系理論 / 擬軌道尾行性 / ホモクリニッククラス / 双曲性 / 占有的分割 |
Research Abstract |
擬軌道尾行性(Shadowing Property,以下,SP)の概念は力学系理論の研究において様々な場面で現れ,力学系の定性的理論の研究において重要な役割を担ってきた。近年,SP理論の発展には目覚しいものがあり,力学系の数値計算的研究の基盤を固めるだけでなく,多くの興味深い定性論的研究結果も生み出されている。SPは,力学系の安定性に関係する概念である。多様体M上のSPをもつ微分同相写像全体をSP(M)で表す。研究代表者は,そのC^1-位相に関する内点集合を構造安定性として特徴付けた。SP理論における最も基本的な研究対象は,微分同相写像fの鎖回帰集合R(f)である。R(f)は,ある同値条件により鎖成分と呼ばれるものに分割される。研究代表者の研究成果を応用することにより,北京大学のグループが,fの双曲型周期点pを含む鎖成分C_f(p)は,自然なSP-C^1-開条件のもとで双曲的であることを解明している。fの双曲型周期点pの安定多様体・不安定多様体の交わりの閉包をpのホモクリニッククラスといいH_f(p)で表す。一般にH_f(p)は,C_f(p)の真部分集合で,力学系理論における基本的な研究対象である。 本研究の目的は,M上の微分同相写像fの双曲型周期点pのホモクリニッククラスを,自然なSP-C^1-開条件のもとで微分力学系理論の視点から特徴付けすることである。平成22年度の研究では,任意の鎖成分に対し,局所極大という付加条件の下でその双曲性を証明している(数学専門雑誌に投稿中)。本年度は,本研究計画調書「研究計画・方法」にあるステップ(2)の解決をその目的とし,北京大学を訪問することにより上記グループメンバーと共にステップ(2)について詳細な研究討論を実施したが,現時点でその解決には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分岐理論や一般性の理論を応用する段階で摂動による干渉の制御に多々問題があり,本研究計画調書「研究計画・方法」にあるステップ(2)の解決に至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の今後の推進においては,研究計画の大きな変更はない。平成24年度においては,上記ステップ(2)の解決に向け,摂動論における既知の基本的研究結果についてその証明を根本から詳細に見直し,本研究の推進に応用可能なように改良を行っていく。
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