2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540277
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川合 光 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80211176)
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Keywords | 弦理論 / 量子重力 / 自然性問題 / IIB行列模型 / 弦理論の非摂動的定式化 / 密度の初期揺らぎが / ランダム系 / ユニバーサリティ |
Research Abstract |
[1.]弦理論・量子重力の低エネルギー有効作用と自然性問題 弦理論および量子重力によって宇宙項やスカラーの質量などの自然さの問題が解決できる可能性について考察した。行列模型をはじめとした、重力を含む理論では、低エネルギーの有効作用が必然的に多重局所的なものになることを示し、それから、自然性問題が解決できる可能性を示した。 [2.]弦理論の非摂動的定式化と時空の創発 弦理論の非摂動的定式化の有力な候補であるIIB行列模型を数値的および解析的な両面から分析した。特に、IIB行列模型のWilson loopに対するSchwinger-Dyson方程式が弦の場の理論を再現することを、数値シミュレーションを援用して確認した。これは、行列模型が確かに超弦理論をあらわしており、時空が行列の自由度からemerge(創発)していることを示している。 [3.]宇宙初期揺らぎと弦理論の質量スケール 宇宙の指数膨張が、ドジッター時空中での弦理論の様々なモードの量子揺らぎにより引き起こされる可能性について考察した。特に、弦理論の質量とコンパクト化のスケールが、宇宙初期の指数膨張のハブル定数よりおよそ1ケタ小さいようなモデルを考えると、インフレーションと密度の初期揺らぎが同時に説明できることを示した。 [4.]ランダム系に共通した新しいユニバーサリティクラスの探求 行列模型や弦理論・量子重力はランダム系の一種とも考えられるが、そのような系は粘弾性を含む大きなユニバーサリティクラスに属していることを示した。それらの系の有効理論は計量テンソルを自然な形で含み、一般座標変換に対する不変性が自然に現れることを示した。この方向での考察をさらに進め、超弦理論から身のまわりの物質にいたるまでを包括した新しいユニバーサリティの開拓を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にのべた[1.]~[4.]は、昨年度から引き続き順調に発展しており、順次論文として成果を発表している。特に、[1.]では行列模型との関係が明らかになるなど、大きな進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
具体的な研究方法としては、数値的および解析的な考察を並行して進める一方で、研究会、セミナーなどを通じて、各地の素粒子物理、場の理論、物性理論、宇宙論、数理物理などの専門家たちと幅広く交流することによって、新しい視点を開き問題を解決していく所存である。
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