2010 Fiscal Year Annual Research Report
多端子量子ドット系の理論研究:制御可能なスピンホール効果の提案
Project/Area Number |
22540333
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
江藤 幹雄 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (00221812)
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Keywords | 量子ドット / スピン軌道相互作用 / スピンホール効果 / スピンエレクトロニクス / 近藤効果 / クーロンブロッケード |
Research Abstract |
多端子量子ドット系の理論研究の中で、本年度はスピン軌道相互作用に起因するスピンホール効果を中心に研究を進めた。 1.多端子量子ドット系におけるスピンホール効果の定式化をおこなった。最小モデルとして量子ドット中の2つの準位を考慮し、InAsではたらく強いスピン軌道相互作用を取り入れた。1つの端子(ソース電極)から非分極の電流が入射したときの残りの端子へ出力電流とスピン分極の計算式を、非平衡グリーン関数法を用いて導出した。 2.クーロン振動の電流ピーク近傍で電子間相互作用が無視できるとき、次の結果を解析的に示した。(1)2端子系ではスピンホール効果は生じず、出力電流にスピン分極は現れない。(2)3端子系で次の条件が満たされるとき、共鳴トンネルによってスピンホール効果が増大する:ソースおよびドレイン端子のトンネル結合による線幅に比べて量子ドット中の準位間隔が小さいこと、第3の端子へのトンネル結合による線幅がスピン軌道相互作用の大きさと同程度であること。このとき出力電流のスピン分極は80%程度になり得、スピン注入デバイスへの応用が期待される。 3.クーロンブロッケード領域では近藤効果によって多体の共鳴状態がフェルミ準位に形成される。近藤温度が準位間隔より大きいとき、2準位が絡んだSU(4)近藤効果が生じる。このとき多体の共鳴準位を介してスピンホール効果が著しく増大することを示した。 4.量子ドット複合系における近藤効果や多体問題の研究を進め、スピン依存現象に関する知見を得た。(1)ABリングに埋め込まれた量子ドットにおける近藤効果のスケーリング解析。(2)量子細線の側面に結合した量子ドットにおけるファノ近藤共鳴、磁場中でのカイラル非対称な近藤雲の形成の指摘。(3)タイプII量子ドットでの多体効果、ウィグナー分子形成のフォトルミネッセンスへの影響の解明。
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