2010 Fiscal Year Annual Research Report
スピン密度波型反強磁性秩序によるフェルミ面不安定化の直接的検証
Project/Area Number |
22540382
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
櫻井 吉晴 (財)高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 副主席研究員 (90205815)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 真義 (財)高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 副主幹研究員 (10344392)
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Keywords | 強相関電子系 / 金属物性 / 超伝導材料・素子 / 物性実験 / 放射線・X線・粒子線 |
Research Abstract |
本研究課題では、スピン密度波型反強磁性を示すCrと鉄系高温超伝導体の母物質のフェルミ面形状を明らかにし、スピン密度波型反強磁性の出現によるフェルミ面不安定化現象を直接的かつ定量的に観察することを目的とする。フェルミ面の観察には、高分解能コンプトン散乱実験を利用したフェルミ面マッピング法を用いる。 本年度はCrの測定を行った。Crが常磁性状態にある373Kとスピン密度波型反強磁性状態にある233Kの2温度で、100方位のコンプトン・プロファイルを測定した。コンプトン・プロファイルは3次元電子運動量密度を100軸に射影した1次元電子運動量密度分布を与える。フェルミ面は運動量空間における電子占有と非占有の境界面として定義されるので、フェルミ面の形状はコンプトン・プロファイルの微細構造として現れ、フェルミ面形状の変化はコンプトン・プロファイルの変化として観測される。2点の温度で測定したCrのコンプトン・プロファイルの差には、運動量の原点近傍で微小ではあるが有意義な変化が観測された。この結果は、常磁性状態からスピン密度波型反強磁性状態への変化に伴いフェルミ面形状が変化している可能性を示唆している。 本実験結果はフェルミ面形状と磁気構造が密接に関係していることを示している。フェルミ面近傍の電子状態が超伝導の発現に大きく影響することが知られている。今回測定したCrは超伝導体ではないが、鉄系高温超伝導体や銅酸化物高温超伝導体でもCrと同様に、反強磁性と超伝導が相関を持っていると考えられる。次年度は鉄系高温超伝導体について検証を行う。
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