2010 Fiscal Year Annual Research Report
基底状態の量子もつれ破壊と量子エネルギーテレポーテーションの理論研究
Project/Area Number |
22540406
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
堀田 昌寛 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教 (60261541)
|
Keywords | 量子力学 / 量子プロトコル / 量子エンタングルメント / 量子エネルギーテレポーテーション |
Research Abstract |
22年度において量子エネルギーテレポーテーション(以下QET)に関する本研究は世界的に注目を集めた。アメリカMITが出版しているTechnology Review誌で紹介され大きな反響を呼び、同誌のBest of 2010も獲得した。同様にアメリカのBusiness Insider誌が発表する15 Ground breaking Inventions of 2010にも選ばれている。またグーグル本社で行われる完全招待性の会議にも招かれた。研究の進展としては、電磁場の真空状態を使ったプロトコルの解析を行い、量子揺らぎに関して有限の離散的情報量を測定するプロトコルよりも連続無限の情報量を測定するほうがより多くのエネルギーを転送できることを示した。また2量子ビット系において、非自明でかつミニマルなQETプロトコルを提案した。更に測定でテレポーテーションのために消費される量子もつれ量とそれによって転送されるエネルギー量の間に成り立つ2つの不等式を解析的に示した。これにより、ある量の量子もつれを測定で消費したときの最大エネルギー転送効率及び、あるエネルギーを転送するための量子もつれ消費の最小量を同定できた。量子情報のみを転送する通常の量子テレポーテーションにおいても量子もつれがその"physical resource"と見なせるように、この結果からQETにおいても量子もつれはその"physical resource"と見なせることがわかった。またこの関係は「物理量であるエネルギー」と「情報量である量子もつれ」を強く結び付けるため、J.Wheelerが提唱していたIt From Bitという思想をより明確に具現化していると言える。また多数の調和振動子を連結させた鎖系においても数値解析により同様の量子もつれと転送エネルギー量の間の不等式を与えることができた。また測定による様々な量子もつれの消費の仕方、得られる情報量とそれにより転送できるエネルギー量の関係を様々な設定で詳細に解析した。またブラックホールのエントロピー問題に対してもQETを用いて解析を行い、そのエントロピーは外部の測定で得られる真空状態の場の零点振動を深く結び付いているという示唆を得た。
|
Research Products
(6 results)