2011 Fiscal Year Annual Research Report
VLESモデルを利用した海洋内部重力波の励起源近傍における乱流混合過程の解明
Project/Area Number |
22540447
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
丹羽 淑博 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特任准教授 (40345260)
|
Keywords | 内部重力波 / 乱流混合 / VLES / 内部潮汐波 / 近慣性内部重力波 / 乱流パラメタリセージョン / 海洋深層大循環 / 非線形相互作用 |
Research Abstract |
気候変動予測に用いる海洋大循環モデルの高精度化には、サブグリッドスケールの乱流混合過程の適切なパラメタリゼーションが必要不可欠である。特に、中央海嶺や台風などの海洋内部重力波の励起源の近傍は、活発な乱流混合が集中するホットスポットとなっている。平成23年度は、海底地形上を潮汐流が乗り越えることによって励起される内部重力波(内部潮汐波)に起因する乱流混合過程のVLES(Very Large Eddy Simulation)を実施するための準備として、内部潮汐波エネルギーの全球分布を調べるための三次元数値シミュレーションを実施した。全球を同時にカバーする三次元並列数値モデルに現実的な海底地形と密度成層およびバロトロピック潮汐流を組み込んで数値シミュレーションを行い、その結果に基づいて深海の乱流混合過程へ供給されうる内部潮汐波エネルギー量の全球分布を定量的に調べた。その結果、内部潮汐波の活発な励起源が伊豆小笠原海嶺に代表される標高が密度躍層に到達する急峻な海底地形に限定されること、特に1日周期の内部潮汐波エネルギーの大半が北西太平洋沿岸域に集中して励起されていることが明らかになった。さらに、バロトロピック潮汐から内部潮汐波へ転嫁するエネルギー量が水平格子間隔及び海底地形解像度に強く依存し、水平格子間隔の減少につれてエネルギー転嫁率の対数値が線形に増加していることが分かった。特に、高波数の海底地形成分が卓越する大西洋中央海嶺で励起される内部潮汐波エネルギーのグリッド依存性が高いことが示された。さらに、外洋域において水深が1000m以上となる海域で消散される内部潮汐エネルギー量を見積もったところ約500-600GWとなり、Webb and Suginohara(2001)が見積もった深層循環の維持に必要となる乱流混合エネルギー量とほぼ同じになることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度は、当初計画した内部潮汐波に起因する乱流混合過程のVLES(Very Large Eddy Simulation)を実行するための準備として内部潮汐波エネルギーの全球分布を調べるための数値シミュレーションを実施したため、本来のVLESの実行計画にやや遅れが生じている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、23年度に実施した内部潮汐波の全球数値シミュレーションで明らかにした乱流ホットスボットとなりうる伊豆小笠原海嶺などの顕著な海底地形を22年度開発したVLESモデルに組み込んで数値実験を行うことで、内部潮汐波によって生成される乱流混合係数とその空間構造を明らかにする。さらに、その計算結果に基づいて海祥大循環モデルに組み込むための乱流パラメタリゼーションを提案する予定である。
|