2011 Fiscal Year Annual Research Report
都市上空の気温鉛直分観測による都市冷却プロセスの解明
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22540450
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
酒井 敏 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (30144299)
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Keywords | 都市気象 / ヒートアイランド / 気象観測 |
Research Abstract |
近年、ヒートアイランドなど都市サイズの気象現象が社会問題化し、ニュース番組などでも頻繁に取り上げられるようになってきた。しかし、その実態を把握するための観測データは驚くほど少ないのが実情で、主観的な報道が先行しているのが現状である。特に、都市上空の情報は完全に欠落しており、詳細なメカニズムを考える上で大きな障害となっている。また現在、都市気象の研究でよく使われる数値モデルの基礎となっている観測、理論に関する知識は、「過去の時代」のものであり、このような数値モデルに全面的に依存した研究は極めて危険と言わざるを得ない。都市気象に関する知識は、現在の観測、実験及び理論的バックグラウンドの上に、.再構築することが不可欠であり、そのためには、これまでの観測とは異なる方法で現実の大気を観測する必要がある。本研究では、上空の観測からヒートアイランド現象の実態、特に都市の冷却プロセスの解明を目指す。 昨年度までの観測により、少なくとも京都市上空では、午後最高気温を記録してから、日没にかけて、地表付近の大気から冷えるのではなく、まず境界層全体の温度が低下し、その後、境界層上部は冷却が停止して徐々に成層構造を作っていくプロセスが明らかになった。これは、これまでの一般的な考え方とまったく異なっている。これまでは、地表面が冷えることにより、その直上の大気が冷却され、それが徐々に拡散することで、夜間の安定成層構造を作るとされていた。しかし、我々の観測では、逆に境界層上部から成層構造が形成されて徐々に下に降りてくる。これは、少なくとも、大気を冷やす冷源が地表付近ではないことを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、予定していた繋留気球による観測は難航しているが、山の山麓を利用した観測により、研究遂行に必要なデータは得られつつある。そのデータは、これまでの常識を覆すもので、新たな冷却メカニズムの存在を示唆している。さらに、このデータ解析から、冷却プロセスの概略が明らかになりつつある。このようなことから、当初の計画年度内にそのプロセスがほぼ明らかにできるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、主として山麓を使ったデータを中心にデータ解析を行うとともに、大気の放射特性の基本的性質を調べる。特に、これまでの放射の研究は主に定常(平衡)状態に関するものであったことに着目して、時間変化する強制力にたいする応答特性を調べることで、都市上空の大気の冷却メカニズムを解明する。
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