2012 Fiscal Year Annual Research Report
クーロン爆発による高エネルギーイオンの単色化とコンパクト中性子源に関する理論研究
Project/Area Number |
22540505
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村上 匡且 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センタ, 教授 (80192772)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 単色イオン / 理論モデル / クラスター / 高強度レーザー |
Research Abstract |
クーロン爆発の重要な応用として中性子源に関する理論研究を行なった。クーロン爆発の「二種イオン成分を用いることによる単色化効率の増大」という着想を発展させた。実用(例えば医療用基礎研究)に必要な数MeV~数十MeVのイオンエネルギーが必要であり、そのためのレーザー強度は10^20-10^21W/cm^2を超える。またクーロン爆発は球対称にイオンが加速されるため、それらイオンビームの利用効率を高めることが懸案事項の一つとなっている。有名なDitmire等の基礎実験(Nature, 1999)の後、実用的中性子源となり得る提案は出ていないが、今回の混合ナノクラスター・クーロン爆発による単色イオン生成のアイデアがコンパクトな中性子源開発のブレークスルーとなり得る事が予備計算からわかった。昨年度は、理論とシミュレーションにより最適なレーザー&ターゲットパラメータを絞り込み、実験計画として推進できるレベルまでシナリオを仕上げた。2種混合イオンの一方に重水素を適用させた場合、飛躍的に中性子反応数を増大させる結果を予備的に得ており、これがコンパクト中性子源開発研究におけるブレークスルーになるものと見ている。これまでの単一(シングル)のクーロン爆発の知見を拡張し、多数(マルチ)のクーロン爆発により生じた高エネルギー重水素イオン同士の衝突過程(核反応)を考えることにより、中性子反応数を定量的に評価できることが明らかとなった。このためのモンテカルロコードを開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、簡易な理論モデルの構築、解析用数値シミュレーションの構築とそれを用いたシミュレーションを行なって来ており、おおむね順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
クーロン爆発を利用するとイオンが高速に加速されるが、単一のイオン種だけで構成された球ターゲットを使用した場合、生成されるイオンのエネルギーは広いエネルギースペクトルを持つため、目的とする単色特性からはかけはなれたものとなる。これに対して、現在進めている研究では、二種イオン混合のナノクラスターに対する最適構造を使うことにより、等エネルギーイオンを大量に生成する事が理論的に期待される。したがって、今後の我々の研究目的は、超高強度レーザーと最適ナノ構造クラスターとの相互作用を3次元の粒子シミュレーションによって解析し、クラスターの初期密度、初期半径、混合比といったパラメーターが、最終的なイオンエネルギーのスペクトルにどう影響を与えるか、といった評価を行い定量的に最適構造を決定することである。
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