Research Abstract |
平成22年度は,S≡N結合とS=NH結合を備え持つndsaH配位子と両端にS≡N結合を有するndsdsd配位子を用いて,i)発色団として用いられるジイミンやフェニルピリジン誘導体からなる混合配位子型Pt(II)錯体を合成し,その発光特性を調べた。また,ii)[Pd(ndsdsd)_2]X_2錯体の発光特性に関す研究においては0発光機構を明らかにする目的で,Pd錯体の各溶媒に対する溶解度を高めるため,ndsdsd配位子のフェニル基を4-t-ブチルフェニル基に置換した新規配位子の合成を試みた。 i)に関しては,様々な置換基を有する[Pt(diimine)(ndsa)]X,[Pt(diimine)(ndsdsd)]X_2錯体や[Pt(ppy)(ndsdsd]X錯体(X=Cl,ClO_4)の合成に成功し,いくつかのPt錯体においては0分子構造をX線構造解析により明らかにした。[Pt(diimine)(ndsa)]Xは,室温,ジクロロメタン溶媒中で強く発光した。また,これら錯体の量子収率の計算を行ったところ,13-19%と10%を超える値を示した。さらに,絶対量子収率の計算では,その内部量子収率が4.8-8.5%とこれまでに報告されているσドナー性の強い炭素配位子を用いた錯体と同程度の値が得られた。[Pt(diimine or ppy)(ndsdsd)]X_2錯体は,ガラス状態(メタノール/ジクロロメタン1:1混合溶媒,77K)で強く発光した。また,[Pt(ppy)(ndsdsd)]X錯体は,ジイミン系とは異なり,室温溶液状態でも発光が見られた。ii)に関しては,4-t-ブチルフェニル基を有するスルフィミドとフルオロスルファンニトリルとを塩基存在下で反応させることにより,低い収率ではあるが目的化合物を得ることができた。また,別法として,4-t-ブチルフェニル基を有するN,N-ジトリメチルシリルスルホジイミドとスルフィミドとフルオロスルファンニトリルとを反応させることで,異なる置換基を有するndsdsd配位子の合成についても検討している。これらの配位子については,Pdイオンとの錯化を試み,発光挙動について検討する予定である。
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