Research Abstract |
金属錯体を結合した生体分子は,金属錯体由来の電気,磁気及び光物性と生体分子由来の自己組織化能や生体親和性を併せもつ機能性分子として注目を集めている,特に,アミノ酸及びペプチドは入手容易である事,高い化学的安定性を示すこと,アミノ基,カルボキシル基および側鎖置換基のおける多様な化学変換が可能である事,自己組織化を利用した高次構造構築が可能である事などの利点を有する.申請者らは金属結合型アミノ酸及びペプチドに着目し,これらの合成,構造及び機能開拓に関する包括的な研究を行った.その結果,アリルグリシン誘導体とNCNピンサーパラジウムあるいは白金錯体を鈴木-宮浦カップリングさせる事で錯体部位の構造および機能,またアミノ酸由来の光学純度を損なう事なく遷移金属錯体結合型ノルバリンを高収率で得る事に成功した,また,これらの誘導体化およびベプチド化にも成功した.また,その過程においてN-あるいはC-末端に長鎖アルキル基を導入したノルバリン誘導体が種々の芳香族溶媒中で自己組織化し,超分子ゲルを与える事を見出した.1R,SAXS,WAXなどの分光学的手法やcryo-TEMによる電子線回折を用いた構造解析の結果,超分子ゲルがアンチパラレル型のbシート多層積層構造を形成している事を明らかとし,同手法によって金属錯体を高度に制御し集積することが可能であることを示した.さらに,ここで得られた超分子ゲルの触媒機能について検討し,アルキン酸誘導体の環化反応において水中で作用する再利用可能な不均一系超分子触媒として機能する事を見出した.また,優れた発光機能を示す新規ベンズアルジミン白金錯体結合型グルタミン酸の合成に成功した.さらに,これらの自己組織化能を見出し,生成した超分子ゲル中における分子集合体の精密構造解析に成功した.以上、申請者らは提案課題において,新規メタル化アミノ酸の合成に成功し,これらの官能基化及びペプチド合成,さらには自己組織化を通して金属錯体の集積様式が高度に制御されている事を初めて直接観察する事に成功した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的通り,優れた触媒機能を示す,Pd,PtおよびRu結合型アミノ酸,ペプチドの合成に成功し,これらの自己組織化によって調製される分子集合体(ゲル)が水中で作用する超分子触媒となる事を明らかにした.また,上記メタル化アミノ酸の縮合・連結による異種金属ペプチドの合成に成功し,同手法によって触媒金属の組成と配列が制御が可能であることを明らかとした.現在は,メタル化ペプチド超分子を用いた異種金属集積型触媒とこれらの触媒作用に関する詳しい検討を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
メタル化ペプチド超分子触媒の創出については,ペプチド水素結合とペプチドN,C-末端に導入した配位子による複合的な自己組織化法を検討中である.これによって,膜タンパク類似の高次構造を有し,物質輸送や反応場となる触媒機能を有するナノ空間の創出を目指す.
|