2011 Fiscal Year Annual Research Report
分子電子スピンの4量子ビット系量子テレポーテーションの実証
Project/Area Number |
22550124
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
中澤 重顕 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 特任講師 (70342821)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
工位 武治 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 特任教授 (10117955)
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Keywords | 量子演算 / パルスELDOR / 量子ビット / 量子コンピュータ / 有機ラジカル / 2量子遷移 / 量子分子メモリ / ジラジカル |
Research Abstract |
量子計算・量子情報処理研究において、量子情報を如何にして量子ビットに記憶させるかといういわゆる量子メモリーの研究課題がクローズアップされてきた。量子計算・量子情報処理において量子メモリーは必要不可欠であるのでその重要性に鑑み当該年度は有機磁性分子を用いた量子メモリーの研究もおこなった。 2つのニトロキシド基をもつ分子であるイミノニトロキシド-ニトロキシド直接連結型基底三重項ジラジカル1は交換相互作用J=+550K、微細構造定数|D|=0.0639cm^<-1>、|E|=0.005cm^<-1>、g_x=2.0032、g_y=2.0048、g_z=2.0032であることが岡田、工位らによって実験的に決められている。この分子は、ゼロ磁場下で超伝導qubitと結合する分子スピンqubitアンサンブルとして興味がもたれ量子メモリーとして期待されるが、スピン物性を精緻に解析する必要がある。 D値の絶対符号を決定するために10K以下でESR測定を行った。三重項スペクトルのZ成分の低磁場側と高磁場側の強度にボルツマン分布による寄与の差からD値の符号を決定することができる。実測の結果、分子1のD値の符号は負であると決定した。微細構造定数の量子化学計算からスピン-スピン相互作用だけでなくスピン軌道相互作用も重要であることがわかった。また、分子1は広範囲の低温領域のESR測定において2量子遷移の信号が観測されたので、CW/Pulse ESRをもちいて、詳細な2量子遷移の機構解明の研究も併せて行った。143Kおよび10Kにおける、2量子遷移強度のマイクロ波パワー依存性から2量子遷移はConsecutiveな機構であると結論した。 今回の研究結果からジラジカル1は量子メモリーとして有望なスピン物性を備えている重要な研究対象であることがわかった。また、量子演算の高速化の観点から2量子遷移を利用した量子情報処理の研究の端緒になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3電子スピン量子ビット系について、希釈単結晶化には成功しているが、ESRスペクトルが複雑で完全解析には至っていない。4電子スピン量子ビット系について、溶液ESRは完全解析には成功し、新たな知見も得られている一方、希釈単結晶育成のためのホスト分子の合成が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
3電子スピン量子ビット系について、結晶内での分子構造は分かっているので、それに基づいて予想される単結晶ESR/PELDORのスペクトルと観測スペクトルを照らし合わせながら完全解析を早期に実施し、分子スピン電子量子ビット系での初めての量子情報処理実験を達成する。4電子スピン量子ビット系についてホスト分子の合成ルートを完成させる。
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