2011 Fiscal Year Annual Research Report
空気中で高速電場駆動する導電性高分子アクチュエータの開発
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22550192
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
奥崎 秀典 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 准教授 (60273033)
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Keywords | 導電性高分子 / アクチュエータ / 人工筋肉 / PEDOT/PSS / 電場駆動 / 吸脱着 / 水蒸気 / 収縮 |
Research Abstract |
組成比の異なるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)を新たに合成した。合成により得られたPEDOT/PSS水分散液にエチレングリコールを添加し、空気中50℃で一晩乾燥させた後、真空120℃で1時間熱処理することによりキャストフィルムを作製した。フィルムの電導度は四探針法により測定した。PEDOT/PSSフィルム(長さ50mm,幅2mm,膜厚20μm))の電気収縮挙動は、変位センサと温湿度センサを装着した装置を用い、恒温恒湿槽内で測定した。フィルムの表面温度は赤外温度計(THI-500S,Tasco)を用いて測定した。電導度はPEDOT/PSS-3フィルムで最大210S/cmであった。PSS比の増加とともに減少し、PEDOT/PSS-15フィルムでは70S/cmであった。PSS組成比の異なるPEDOT/PSSフィルムに25℃,50%RHで10V印加した時の収縮率,電流,表面温度を測定した。電圧印加によりフィルムに電流が流れ,ジュール熱が発生することでフィルムの表面温度が上昇する。さらにジュール熱で水分子が脱着することでフィルムが収縮する。電圧をオフにすると,再び水分子を再吸着し元のサイズに戻る。フィルム内のPSS比が増加することで収縮率がPEDOT/PSS-3の2.9%からPEDOT/PSS-15の5.1%に増加した。これに対し、電流値と表面温度は電導度の低下により減少することから、電気収縮のエネルギー効率が向上したことがわかる。さらに、組成の異なるPEDOT/PSSフィルムの50%RHにおける電気収縮率を測定した。フィルムの収縮率は印加電圧とともに増大し、8~12Vで最大となった。しかし、それ以上の電圧では収縮率が逆に低下したことから、PEDOT/PSSフィルムの熱膨張が起こったと考えられる。興味深いことに、PSS比が増えると最大収縮率が顕著に増加し、PEDOT/PSS-15で最大5.6%に達した。これは、従来のフィルムに比べ2.3倍大きな値である。親水性のPSSが増加することで含水率が増大したとともに、フィルムの変形を妨げているコロイド粒子間の水素結合が減少したためと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(i)PEDOT/PSSにPSSを添加、(ii)組成比が異なるPEDOT/PSSを新規に合成することで、フィルムの電気収縮率を2倍以上に向上させることに成功した。さらに、(ii)では(i)に比べPEDOT/PSSフィルムの電導度が高いことから、アクチュエータの駆動電圧を低下できることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
電圧印加による導電性高分子材料の変形挙動は、これまで大気中でレーザー変位計を用いて測定してきた。しかし、温湿度が任意にコントロールできず、またテコの原理を用いて変位を拡大する必要があったことから十分再現性のあるデータを得るのは困難であった。そこで、高性能力学特性試験機と温湿度制御ユニットならびにポテンショスタットを組み合わせた環境制御型アクチュエータ特性評価装置を新たに構築する。本システムにより、10~80℃、25~85%RHの任意の温湿度環境下で導電性高分子の電気力学特性を評価することができる。等張条件下におけるフィルムの変形量および等尺条件下における発生応力を、印加電圧、温度、湿度などを変化させながら系統的に評価することで、応答速度や出力密度、エネルギー変換効率、耐久性等を評価する。
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