2011 Fiscal Year Annual Research Report
グラフェン/有機半導体接合を活用した高機能有機薄膜素子開発
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22560002
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
上野 啓司 埼玉大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (40223482)
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Keywords | グラフェン / 酸化グラフェン / 可溶化 / 有機FET / 有機薄膜太陽電池 / 単層剥離 / 塗布成膜 / 正孔輸送層 |
Research Abstract |
本研究では,化学的薄片剥離法により形成し可溶化したグラフェン薄片を,有機薄膜素子の構成材料として用いることによって,有機薄膜太陽電池および有機薄膜電界効果トランジスタ(FET)の性能を,現状よりも大きく引き上げることを目指している。平成23年度の研究では次の成果が得られた。 (1)酸化グラフェン塗布膜の還元により得られるグラフェン透明導電膜の導電性を向上させるためのドーピング材料として,金属性層状物質であるNbSe_2の利用を試みた。酸化グラフェン塗布膜上にNbSe_2分散溶液をスピンコートしてから真空加熱還元したところ,得られた還元グラフェン透明導電膜の電気伝導度がNbSe_2未塗布の薄膜に比べて3倍以上に向上していることが確認された。 (2)酸化グラフェン薄膜の還元により得られるグラフェン導電膜は,有機FETの電極として優れた性能を発揮することがこれまでの研究で判明している。一般に有機FETは,p型は安定で優れた性能を示す例が多いものの,n型は特に大気下では不安定である。そこで塗布形成可能なn型材料として酸化亜鉛ZnOに着目し,還元グラフェン電極と塗布ZnO薄膜を組み合わせた薄膜FETを作製したところ,塗布形成p型有機FETと同程度の移動度を示す素子が得られ,グラフェンが無機FET電極としても応用可能であることが示された。 (3)可溶化酸化グラフェンを有機薄膜太陽電池の正孔輸送層として用いる場合には,塗布膜の膜厚および被覆度の制御が必要であるが,スピンコート成膜ではその調整が難しい。そこで被覆度が高く厚い酸化グラフェン塗布膜をスピンコート形成し,その後に紫外線/オゾン処理を施したところ,被覆度を保ったまま酸化グラフェン膜をほぼ単層化することが可能であることを見いだした。 (4)酸化グラフェン添加PEDOT:PSSをn型結晶シリコン表面に塗布成膜したヘテロ接合型太陽電池を作製したところ,最適な添加量の下で10%超の光電変換効率が得られることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グラフェン透明導電膜導電性向上の課題については,NbSe_2ドープによって電気伝導度を向上させることに成功しており,高導電かつ安定な透明電極の開発につながる成果が得られている。また酸化グラフェン塗布膜の応用についても,正孔輸送層としての利用の際に必要な膜厚制御手法の開発に成功している。さらに酸化グラフェン添加PEDOT:PSSと結晶Siとのヘテロ接合により高効率太陽電池が実現可能であることも新しく発見した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)グラフェン透明導電膜については,NbSe2添加条件,酸化グラフェン還元条件の最適化により,さらなる導電性向上を目指す。また作製した透明導電膜を用いた太陽電池,タッチパネル素子の作製も試みる。 (2)これまでの研究から,酸化グラフェンが薄膜太陽電池の正孔輸送層として有望であることが判っているが,PEDOT:PSSと比較して素子寿命が改善されるかについては未検討なので,今後実験を進める。 (3)グラフェン電極FETについては,有機p型素子と無機n型素子を全て塗布形成して組み合わせたCMOS素子の作製を試みる。 (4)有機/結晶Siヘテロ接合太陽電池については,素子構造の最適化により,さらなる光電変換効率向上を目指す。
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Research Products
(28 results)