2010 Fiscal Year Annual Research Report
スピン軌道相互作用系におけるスピンネルンスト効果の理論と観測
Project/Area Number |
22560004
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
白崎 良演 横浜国立大学, 工学研究院, 准教授 (90251751)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽田野 直道 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (70251402)
中村 浩章 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (30311210)
遠藤 彰 東京大学, 物性研究所, 助教 (20260515)
長谷川 靖洋 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (60334158)
|
Keywords | スピン軌道相互作用 / ナノワイヤ / ビスマス / 熱電能 / 量子振動 / フォノンドラッグ / スピン流 / InGaAs系 |
Research Abstract |
本研究課題では、強磁場の下でスピン軌道相互作用(SOI)を持つ系の電子状態を調べ、熱流によってスピン流が現れる条件を明らかにすることと、SOIを持つ2次元系やナノワイヤのスピン流と磁化の関係を調べ、スピン流現出の新たな確認方法の検討を行うことを目的にしている。 平成22年度では、スピン流を調べる前段階として、Rashbaスピン軌道相互作用(RSOI)を持つ擬一次元電子系において、電気伝導度や熱伝導度、熱電能等の、温度勾配と電気化学ポテンシャルの勾配の下で現れる輸送現象を理論的に調べた。ナノワイヤでのバリスティックな極限において、ヘテロ接合系InGaAs/InAlAsの物性値を想定し、輸送係数を理論計算した。その結果、輸送現象が温度差や化学ポテンシャルに単調に依存して変化するのではなく、量子効果のために輸送係数の振動が現れることがわかった。ナノワイヤでは、RSOIにより、縦方向の伝導チャンネルの電子バンドにギャップが現れ、これにより、輸送係数が量子振動を起こすと理解できる。この量子振動により、Wiedemann-Franz則が厳密には破れていることも分かった。 平成22年度の補助金の一部を平成23年度に繰越して、ビスマスナノワイヤのネルンスト係数に対するフォノンドラッグ効果を理論的に調べた。理論計算の結果、ワイヤー径を100nm程度まで小さくしていくと、ネルンスト係数の量子振動のピークが高くなっていくが、100nm以下になると、量子振動のピークが小さくなる特異な振る舞いが導かれた。 以上のように、一般的な輸送係数の量子振動現象とフォノンドラッグ効果のワイヤ径依存性が明らかになったが、これらの現象は熱流により誘起されるスピン流にも影響をおよぼすことが予想される。
|