2011 Fiscal Year Annual Research Report
耐熱ガスバリア膜を用いたガスケット材料の熱酸化特性の向上
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22560083
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
米倉 大介 徳島大学, 大学院・ソシオテクノサイエンス研究部, 准教授 (70314846)
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Keywords | ガスバリア / 熱酸化劣化 / ガスケット / スパッタリング / 薄膜 |
Research Abstract |
平成23年度はガスバリア膜の被覆状態が熱酸化劣化に与える影響を検討した.また,試験片に繰返し曲げ変形を与えることで膜に損傷を与え,その損傷状態と熱酸化劣化の関係の検討を行った. 1.ガスバリア機能の再現性の確認: ガスバリア機能の再現性を確認するため,傾斜対向型DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて昨年度と同様の条件でSi-O-N膜をPET上に被覆した.その際,Si-O-N層の膜厚をそれぞれ30,60,120,180nm程度で成膜し,ガスバリア性能と膜厚の関係についても再現性を確認した. 2.ガスバリア膜被覆状態と熱酸化劣化の関係: PET上で膜厚120nm程度となる時間でガスバリア膜をガスケット用ゴムシート上に被覆した.得られた被覆材をマッフル炉を用いて大気中,160~180℃,8~24時間の条件で加熱した.熱酸化劣化の度合いは引張試験により評価した.また,真空下での加熱処理も行い,劣化に及ぼす酸素の影響を評価した.その結果,170℃以上の加熱では劣化に及ぼす酸素の影響が非常に大きいことが明らかになった.また,ゴムシートにSiOxNy膜を被覆することで加熱後の破断伸びの低下が小さくなり,熱酸化劣化の抑制効果が明らかに現れた.特に,ガスバリア性の高い膜厚60,120nmの試験片では熱酸化劣化を効果的に抑制できた. 3.熱酸化劣化に及ぼす膜の損傷の影響: Si-O-N膜を被覆した試験片を曲率半径100mmの円筒表面に繰返し押しつけて膜に損傷を付与した.これを大気中,170℃,24時間加熱し,損傷付与の有無による熱酸化劣化挙動の違いを検討した.検討の結果,膜に損傷を与えた場合でも,加熱後の破断伸びは損傷を与えていない試験片とほとんど変わらず,100回程度の繰返し損傷を与えてもガスバリア膜の被覆によるゴムシートの熱酸化劣化の抑制効果は維持されることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成22及び23年度の結果より,ガスケット用ゴムシートの熱酸化劣化は160℃程度以上で顕著になること,ガスバリア膜の被覆により熱酸化劣化を抑制できること,基板を研磨してもガスバリア膜の被覆による熱酸化劣化抑制効果にあまり効果がないこと,ガスバリア被覆材にある程度の曲げ損傷を与えても熱酸化劣化抑制機能が維持できること,などを明らかにできた.したがって研究め目的は,当初の計画通り順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針としては,薄膜の損傷状態と熱酸化劣化量の関係を詳細に検討すべく,24時間以上の加熱時間で比較検討を行う.また,ガスケットの母相であるゴム単体の熱酸化劣化に及ぼすガスバリア膜の効果を調べ,より適切な被覆状態を明らかにする.
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Research Products
(2 results)