2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22560300
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
小野田 光宣 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (80128785)
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Keywords | 電気化学敵集合 / 導電性高分子 / ポリピロール / 電解重合反応機構 / 成長形態制御 / 節点数制御 / 生体親和性 / 神経刺激電極 |
Research Abstract |
電解重合反応は電極近傍の極めて限られた不均一系の反応であり,電解液の組成や電解条件など種々の諸因子が非常に複雑に関与しているため単純には電解重合反応の機構を結論できないという難点がある。本年度は,前年度である程度明らかになった定電流電解重合法による形態制御をさらに明確にするため次のような検討を行なった。電解重合反応では溶媒の塩基性(親核性)がモノマーのそれより小さければ重合体が得られるが,モノマーの塩基性を超える溶媒を用いるとラジカルカチオンは溶媒と相互作用し重合反応は進まないことが分かっている。すなわち,用いる溶媒の極性は電解質の解離とラジカルカチオンの安定性に影響し,その塩基性が重合体形成の有無に関係している。また,電解重合を定電流で実施した場合,単位時間当たりのラジカルカチオンの発生量は一定となるので,ラジカルカップリング反応を仮定すると反応活性種の濃度はモノマー濃度に無関係で電流効率(通荷電荷量に対する重合体生成に使用された電荷量の割合)は変わらないと考えられる。このような考えから,モノマー濃度や定電流値を適宜変化させることにより導電性高分子の形態を針葉状と広葉状を任意に制御できることを見出した。特に,定性的ではあるが電解重合反応機構と形態を関連付けることができ,親電子置換カップリング反応が主反応では針葉状,ラジカルカップリング反応が主反応では広葉状の形態が得られることを示した。導電性高分子が金属と比較して高い生体適合性を有するならば,医用生体工学における新しい人工臓器材料としての機能応用が期待され,導電性を有することから人工視覚,人工聴覚あるいは人工網膜などに用いられる体内埋め込み型神経刺激電極の開発を基本とする神経インタフェース技術の新たな展開,進展が考えられ,電解重合膜とマウス筋芽細胞およびマウス筋管細胞との親和性を調べ,優れた生体適合性を示すことを報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電解重合法による導電性高分子合成の反応機構は,電解液の組成や電解条件など種々の諸因子が非常に複雑に電極反応と関与しているため明確には解明されていない。電解重合法では,電極と電解液界面において電子の授受を伴うモノマーと電解質イオン,それに溶媒が関与する分子のダイナミックな動きが生じている。この電解重合反応を定電流で実施した場合,単位時間当たりのラジカルカチオンの発生量は一定となることに気づいた。
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Strategy for Future Research Activity |
導電性高分子の形態制御では,広葉状の導電性高分子をニューロンの核部に対応させると,針葉導電性高分子はニューロンの樹状突起(軸策)とみなせる。この知見をもとに特定の枝を選択的に成長させ,針葉状導電性高分子の先端同士を接触させることができる。接続される針葉状導電性高分子の本数,長さ,太さなどは重合条件に依存する。現状では,広葉状導電性高分子のどの箇所から針葉状導電性高分子が発生するかは特定できないが,フラクタル成長の形状,方向,大きさなどは制御可能になっている。従って,特定の枝を選択的に成長させてニューロン先端(針葉状導電性高分子)同士を接触し,ドープあるいは脱ドープに伴う導電性の変化を利用して情報の符号化を行い,分子通信類似の情報受信システムの構築を行う。すなわち,針葉状導電性高分子はニューロンの軸策に対応するので,核部に対応する広葉状導電性高分子との間でシナプス類似の働きをさせることができる。
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