2011 Fiscal Year Annual Research Report
位相の異なる搬送波のベクトル合成を用いた全ディジタル化送信機の研究
Project/Area Number |
22560392
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
楳田 洋太郎 東京理科大学, 理工学部, 教授 (80439918)
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Keywords | 移動体通信 / 電力増幅器 / 高効率 / スイッチング動作 / ディジタル回路 / 送信機 |
Research Abstract |
1.位相の異なる搬送波のベクトル合成を用いた送信機の電力効率改善 前年度において検討した、直交する2つの搬送波を用いた直交アップコンバージョン型送信機は、交流的に正負の2値出力であるため、出力振幅が小さいときに消費電力が低くならず、電力効率が低下する問題があった。これに対し、今年度は正負2値以外に零も含めた3値出力が可能な「正負一ビット直交型送信機」を提案し、その性能を電力増幅器を理想的とする計算機シミュレーションにより評価した。その結果、電力効率は正負2値出力の場合の66%から82%に改善した。この電力効率は研究計画調書にて理論的に予測した直交型の電力効率と一致し、予測の正しさが示されたが、搬送波の多相化により効率をさらに改善する必要がある。 2.トランスバーサルフィルタ型電力増幅器の物理的アナログ回路モデルによる特性評価 前年度は、トランスバーサルフィルタの各経路にスイッチング型電力増幅器を挿入した「トランスバーサルフィルタ型電力増幅器」を提案し、計算機シミュレーションによる評価を行ったが、電力合成は理想的に行えるとしていた。今年度は、電力増幅器と電力合成部に物理的回路モデルを用い、回路シミュレータにより評価した。その結果、提案する構成による変調精度の劣化、および電力効率の低下はなく、フィルタ効果により量子化雑音のみが低減されることが示された。本成果により、高効率電力増幅とともに中心周波数および帯域幅を可変とする狭帯域フィルタ特性が得られ、スイッチング電力増幅器出力に残留する量子化雑音を大幅に低減できる見通しが得られた。 3.包絡線パルス幅変調(EPWM)を用いたスイッチング型電力増幅器の歪補償 直交振幅変調信号のEPWM変調により生じるバースト信号を入力したときのスイッチング型(E級)電力増幅器の歪を、歪の逆特性を入力信号に与える簡易歪な補償により改善できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「位相の異なる搬送波のベクトル合成を用いた送信機」については、正負2値以外に零も含めた3値出力が可能な「正負一ビット直交交互出力型送信機」を提案し、計算機シミュレーションにより電力効率を大幅に改善できることを示した。しかし、提案する送信機の実験的な検証は未実施であり、この点では遅れている。一方、当初計画にはなかった「トランスバーサルフィルタ型電力増幅器」の提案により、本研究で提案する送信機を含む、一般のパルス密度変調を用いたスイッチング動作型電力増幅器の量子化雑音の大幅な低減の見通しが得られた点は大きな進捗である。以上から、研究全体としては、(3)「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
位相の異なる搬送波のベクトル合成を用いた送信機の基準搬送波を2相(直交)から4相に拡張することにより電力効率が改善されることを、電力増幅器を理想的とした計算機シミュレーション、電力増幅器に物理的回路モデルを用いた回路シミュレーション、および伝送実験により示す。また、変調精度が良好であること、および量子化雑音がフィルタにより抑圧可能な程度に抑えられることを示す。さらに、トランスバーサルフィルタ型電力増幅器により、中心周波数および帯域幅を広帯域可変としつつ、高効率電力増幅と量子化雑音抑圧が可能であることを、伝送実験により示す。一方、パルス密度(またはパルス幅)変調を用いたスイッチング動作型電力増幅器では、RF信号がバースト状となることにより歪が発生するが、その歪を歪補償(プリディストーション)により大幅に低減できることを、回路シミュレーションおよび実験により示す。
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Research Products
(5 results)