Research Abstract |
本研究は,近年の景観計画における新たな課題である眺望景観や地域に固有な地形景観の質的評価の理論的基盤を構築することをめざして,景域の骨格をなす「地形」が形成する景観特性の評価と,その特性を活かした敷地デザイン手法の解明を目的としている. 平成22年度においては,地形が形成する景観特性を定量的に評価するために,「開度」の概念(横山ほか,1999)を応用した囲繞度分布の図示化を行った.開度は,尾根線や谷線などの地形特徴の表示を目的として,周囲に比べて地上に突き出ている程度(地下に食い込んでいる程度)を数量化したものであり,各座標点(観測点)の周囲8方向の仰角の平均値によって示される.本研究では,国土地理院が全国整備した10mメッシュの精度の標高データ(数値地図,2009年2月に公開)を地形データとして用い,横山らの研究とは異なり,観測点の周囲16方向の仰角をそれぞれ計測した上で,山が山として意識される仰角5度以上の方向の数,同じく仰角9度,14度以上の数を測定し,観測点が地形によってどの程度囲繞されているか(囲繞度)を基礎とした景観特性の評価を行い,それを図示化するプログラムを作成した. さらに,平成22年の9月8日~10日の3日間,百済寺(滋賀県東近江市)を対象に,地上LIDARを用いた3次元測量によって3次元の空間情報(地形,植栽,建築,庭園構成要素)を取得した.次年度に解析を行い,囲繞性などの景観特性の定量評価の枠組みを提示するとともに,地形の景観特性に合わせた造景意匠についての詳細な考察を行う. 本成果については,平成23年度中に学会論文等で発表予定である.
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