2011 Fiscal Year Annual Research Report
クラスレート半導体におけるゲスト・ホスト相互作用と熱電物性の制御に関する研究
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22560708
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Research Institution | Tokyo University of Science, Yamaguchi |
Principal Investigator |
阿武 宏明 山口東京理科大学, 工学部, 准教授 (60279106)
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Keywords | 熱電変換 / クラスレート / フォノン散乱 / 熱伝導率 / ゼーベック係数 / 有効質量 / ゲスト・ホスト相互作用 |
Research Abstract |
本研究は、クラスレート半導体の特徴である多面体共有結合ネットワーク(ホスト)と多面体空隙中のゲスト原子との相互作用を明らかにし、ゲスト・ホストの操作・制御によって熱電性能を向上させるための材料設計に関して知見を得ることを目的とする。H23年度の主な成果を以下にまとめる。 1.BaゲストSiクラスレート系における熱電物性のキャリア濃度依存性を調べるために、ホストの元素置換(Al・Cu族)によってキャリア濃度を制御することを新しく試みた。粉末X線回折、SEM・EPMA、熱分析等により、試料の結晶学的特性の評価を行った。その結果、Al置換の固溶範囲が実験的に明らかとなった。また、Al・Cu、Al・Auのダブル置換はキャリア濃度制御には適当ではないことがわかった。 2.Ba_8Ga_<16>Si_<30>系およびBa_8Al_<16>Si_<30>系における熱電能のキャリア濃度依存性から有効質量を求め、ゲスト置換による電子構造への影響を比較・解析するための基礎データを蓄積した。さらに、熱電性能指数ZTと密接に関わるキャリア移動度と格子熱伝導率を実験的に求めた。求めた物性値から、これらの系における最適キャリア濃度とZTの予測を行った。 3.ゲスト置換Ba_<8-x>Eu_xGa_<16>Si_<30>系におけるEu置換による格子熱伝導率の低減(フォノン散乱の増強)の効果に関して考察・解析するために、熱伝導機構に関わる物性パラメータ(デバイ温度、アインシュタイン温度、音速、有効質量など)を実験的に求めた。また、求めたパラメータ値を使い種々のフォノン散乱メカニズムを取り入れた格子熱伝導率のモデル計算を行った。その結果、ゲスト原子に起因する共鳴散乱のみならず、有効質量とキャリア濃度の高い系においては電子・フォノン散乱も格子熱伝導率の低減(特に低温領域)において重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BaゲストSiクラスレート系における熱電物性の最適化に関わる諸特性の評価と解析が進んでいる。ゲスト置換によるフォノン散乱の増強効果の解明に必要な物性パラメータの評価やシミュレーションが進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲスト・ホスト相互作用とフォノン散乱との関連を解明するために、フォノン散乱機構に関わる物性パラメータを系統的に変化させた試料における熱伝導率の温度依存性の測定と詳細な解析を進める。
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