2011 Fiscal Year Annual Research Report
フェムト秒レーザー加工による非晶質金属薄膜ナノ周期構造形成
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22560720
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
橋田 昌樹 京都大学, 化学研究所, 准教授 (50291034)
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Keywords | フェムト秒レーザー加工 / 非晶質金属薄膜 / 高エネルギー金属イオン注入 |
Research Abstract |
我々は金属表面にできるナノ周期構造と結晶の関係を明らかすることを目的に高い空間分解能を有する電子顕微鏡用いてナノ周期構造の結晶構造を調べる実験に取り組み、特定の照射レーザーフルーエンスにおいて単結晶の銅が、その結晶性を著しく消失することを見出し、熱過程では説明できないことを明らかにしてきた。結晶性の消失機構を解明するため、平成23年度は、ナノ周期構造形成時に放出される高エネルギーの金属イオンが非晶質化に重要な役割を果たしている可能性をモンテカルロシミュレーション(SRIMコード)により考察した。加えて、精密な実験を実施し、金属薄膜表面にナノ周期構造が形成されるレーザーフルーエンスにおいて非晶質性のレーザーフルーエンス依存性を調べシミュレーション結果との比較を行い非晶質金属の厚みを評価した。 実験では、NaCl基板上の単結晶の銅薄膜(膜厚:300nm)にレーザー(160fs,800nm)を集光照射し、表面の極表層部をアブレーションさせナノ周期構造を形成すると共に、膜厚が30nm程度になるように照射回数を制御した。照射後の金属薄膜は基板から水中分離し、電子顕微鏡により表面及び回折像観察した。ナノ周期構造は0.08-0.64J/cm2のレーザーフルーエンス領域において薄膜表面に形成された。銅薄膜の非晶質性は、銅を特徴づける回折ピークの線幅から評価し、特に0.23J/cm2において著しく結晶性が消失することを再確認した。 0.23J/cm2照射時には、金属表面から30eVのイオンが放出されていることが飛行時間型質量分析により明らかになり、この高エネルギーイオンが結晶性消失に寄与している可能性をSRIMコードにより計算し非晶質層の厚さを評価した。計算結果は、実験により得られた非晶質化のレーザーフルーエンス依存性と良い一致を示し、最大非晶質層が約1nmであることが分った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は非晶質化する機構を実験及びシミーユレーションにより明らかにできており計画とおり進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は計画とおり次の4項目について研究を実施する。1)非晶質化したナノ周期構造付与金属薄膜の組成分析2)フェムト秒レーザー加工により薄膜表面から放出する粒子のエネルギー測定3)フェムト秒レーザー加工により薄膜表面から放出する粒子の空間分布測定4)金属薄膜の非晶質化の形成機構解明と基盤構築
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