2011 Fiscal Year Annual Research Report
固体高分子形燃料電池用ステンレス鋼製セパレータに適する新規表面処理の開発
Project/Area Number |
22560732
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Research Institution | Fukui University of Technology |
Principal Investigator |
羽木 秀樹 福井工業大学, 工学部, 教授 (40117213)
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Keywords | 水溶液腐食 / 水素 / 腐食寿命 / 電気抵抗 / 黒鉛 / 燃料電池 / セパレータ / SUS304ステンレス鋼 |
Research Abstract |
(1)黒鉛粒子に代わる何らかの粒子を用いたブラスト処理に伴う各種ステンレス鋼表面近傍での組織変化と内部応力発生の把握、(2)昇温脱離法に基づくステンレス鋼での水素分析法の確立、(3)黒鉛粒子付着後の冷間圧延と熱処理による密着強度の向上を研究項目として研究を実施したので、これらの概要を次に記述する。(1)について--黒煙粒子に代わる粒子として、安価で耐食性に優れ、電気抵抗が小さな粒子を探したが、適当な粒子を探すことができなかった。(2)について--比較的安価で耐食性に優れるステンレス鋼として、SUS304ステンレス鋼とSUS316ステンレス鋼を選び、これらステンレス鋼における水素脆化防止のための基礎的研究として、これらステンレス鋼中の水素の固溶状態を調べた。焼鈍した試料、冷間圧延した試料、冷間圧延した後、各種の温度で熱処理した試料を準備し、カソード電解法で水素を導入した。昇温脱離水素分析法を用いて、水素分析した結果、水素は、(1)オーステナイト母相に固溶した水素、(2)オーステナイト相中の転位にトラップされた水素、(3)合金元素のNiによる吸引的相互作用を受けた水素として存在することがわかった。また、ステンレス鋼中の水素の固溶状態を明らかにするために、比較試料として炭素濃度と組織の異なる炭素鋼試料を用い、昇温脱離法による水素分析を行った。さらに、腐食環境から鉄鋼材料への水素侵入を検討するために、pHの異なる水溶液環境での腐食に伴う炭素鋼への水素侵入を調べた。(3)について--黒鉛粒子とアルコールを適当な割合で混合した溶液を塗布、あるいはその溶液中に浸漬することによって、ステンレス鋼板表面に黒鉛粒子を付着させた後、冷間圧延と熱処理を行ったが、良好な密着強度を得るまでには至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、ステンレス鋼板表面に黒鉛粒子を均一で強固に付着させることが重要な研究課題であり、付着させる方法としてブラスト処理を予定していた。しかし、市販の黒鉛粒子では目的に合ったブラスト処理ができないことがわかり、方針転換を必要とした。なお、他の研究課題については、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに、黒鉛粒子とアルコールを適当な割合で混合した溶液を塗布、あるいはその溶液中に浸漬することによって、SUS304ステンレス鋼表面に黒鉛粒子を比較的均一に密着できることが明らかになった。また、昇温脱離型水素分析装置用いて、SUS304とSUS316ステンレス鋼での水素分析を行い、ステンレス鋼での水素分析法として昇温脱離水素分析法が極めて有用であり、水素の固溶状態に関するいくつかの知見が得られた。一方、入手可能な黒鉛粒子は粒度が小さく、ブラスト処理に適さなかった。これら昨年度までの研究成果を考慮して、今後は、(1)冷間加工(内部応力の発生)に伴うSUS304ステンレス鋼での組織変化と水素脆化感受性の変化の把握、(2)昇温脱離法に基づくSUS304ステンレス鋼中での水素の固溶状態と水素脆化の関係の把握、(3)黒鉛粒子付着後の冷間圧延と熱処理による密着強度の向上を研究項目とする。
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