2010 Fiscal Year Annual Research Report
重水素透過誘起希土類元素生成反応の現象理解と収率向上
Project/Area Number |
22560744
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
西村 睦 独立行政法人物質・材料研究機構, 燃料電池材料センター, センター長 (20344434)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古牧 政雄 独立行政法人物質・材料研究機構, 燃料電池材料センター, 主幹エンジニア (80354132)
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Keywords | 重水素透過 / 元素変換 / セシウム / プラセオジウム / タングステン / SIMS分析 |
Research Abstract |
CaOとPdの混合層を有するPd多層膜に重水素を透過させる方法で、CsからPr、SrからMo、BaからSmへの元素変換現象が三菱重工のグループを中心に報告されており、トヨタ中研などが再現実験に成功したと報告されている。本研究は、その現象理解と変換効率の飛躍的向上および機能性希少元素である希土類元素(Pr)の生成を視野に入れた材料工学的研究である。本年度は、現象の理解に向けて変換可能元素を拡張するためにWの変換実験を試みた。実験はPd多層膜にWを63kV、2.5E14 ions/cm2の条件でイオン注入し、重水素を1.8気圧で2週間程度透過させ、透過後の試料の表面をSIMSで分析した。なお、SIMS分析は、重水素透過させた試料と同時にWを注入して重水素透過させていない対照試料に対しても同じ条件で実施した。まず、3回実験を行い、そのうち1回の実験において質量数190の有意な増加を観測した。さらに、質量数190の増加を観測した温度条件(50℃から90℃まで変化させる)に近い条件で再度3回透過実験を繰り返した所、3回中2回の確率で同様な質量数190の増加を観測した。この質量数190の増加は様々な分子のCompoundでは説明が難しく、190Osあるいは190Ptの可能性が高い。この変換反応は原子番号が2または4増加し、質量数は4または8増加しており、従来観測されているCsからPrへの変換反応等と同様な規則性を持っている。今後は、今回のWを含めてさらに分析を進め現象の解明に努めるとともに、重水素透過条件を変化させて実験を行い、CsからPr、SrからMoへの収率の向上を目指す。
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