2011 Fiscal Year Annual Research Report
重水素透過誘起希土類元素生成反応の現象理解と収率向上
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22560744
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
西村 睦 独立行政法人物質・材料研究機構, 水素利用材料ユニット, ユニット長 (20344434)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古牧 政雄 独立行政法人物質・材料研究機構, 水素利用材料ユニット, 主幹エンジニア (80354132)
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Keywords | 重水素透過 / 元素変換 / セシウム / プラセオジウム / タングステン / SIMS分析 |
Research Abstract |
CaOとPdの混合層を有するPd多層膜に重水素を透過させる方法で、CsからPr、SrからMo、BaからSmへの元素変換現象が三菱重工のグループを中心に報告されている。2011年12月に神戸で行われた固体内核変換に関わる会議「JCF12」においても、CsからPrへの変換が確認されたとの報告があった。本研究は、その現象理解と変換効率の飛躍的向上および機能性希少元素である希土類元素(Pr)の生成を視野に入れた材料工学的研究である。今年度は、核変換現象が生じるとされているCaOとPdの混合層を有するPd多層膜を用いて水素および重水素透過実験を行い、将来的に元素変換に与える水素(重水素)透過量との相関を明らかにして、元素変換効率向上化ガイドラインを作るための基礎資料を得た。 通常のPd基板に代わりPd-25Agを基板として、その上にCaOとPdの混合層をスパッター法で膜生成し、透過用試料とした。まず200-300℃で水素透過を行ったところ、水素透過度は8~9x10^<-9>molH_2m^<-1>s^<-1>Pa^<-0.5>程度であり、普通のPd-25Ag単体の膜のおよそ半分程度の水素透過流量を示した。CaOという水素透過の抵抗となる酸化膜層が5層存在していても、それぞれが2nmというごく薄い層であるため、膜全体としては十分な水素透過能を持っていることが初めて定性的に示された。重水素透過結果は、同じ温度範囲で6~7x10^<-9>molH_2m^<-1>s^<-1>Pa^<-0.5>程度であり、水素と比較して20-30%程度低い値となった。次に多層膜と同じ厚さの単体Pd-25Ag膜について元素変換反応が生じるとされる透過条件である、200℃以下で水素透過を行ったところ、150℃では4x10^<-10>、100℃では2x10^<-10>とかなり低い値となった。この原因は表面での不純物成分の付着による表面反応律速の影響と考えられた。今年度の結論として、Pd-25Agを基板とすることで十分に高い水素(重水素)透過度が得られることが確認されたため、今後の重水素変換に希望が持てるものの、低温では表面反応の影響が顕著になることから、高真空の装置の使用を考慮する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
元素変換反応が生じていることを分析により確認し、複合膜試料の水素透過状態を把握したことで、最終年度に変換効率向上の見通しを立てた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの元素変換分析・水素透過実験を踏まえて、セシウムを電着・イオン注入等によりドープした多層膜試料を用いて重水素透過を行い、変換効率向上を目指す。
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Research Products
(3 results)