2011 Fiscal Year Annual Research Report
高圧培養による深海底由来メタン生成菌を使ったメタン炭素同位体比の再評価
Project/Area Number |
22560811
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
田角 栄二 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, 技術研究副主任 (50553228)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川口 慎介 独立行政法人海洋研究開発機構, システム地球ラボ, ポストドクトラル研究員 (50553088)
井町 寛之 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, 主任研究員 (20361933)
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Keywords | 資源探査 / メタン |
Research Abstract |
深海底堆積物から生成される生物学的メタン生成メカニズムを解明する為のアプローチとして、我々は、深海底堆積物からメタン生成菌を培養し、その多様性および生理学的・遺伝学的特徴を捉えることが必要であると考えている。ただし、深海底堆積物から分離したメタン生成菌を高圧条件下、特に海底下のような低温(2-4℃)高圧条件で培養する際、増殖に長時間を要することが予想される。そこで、まずは大気圧下における生育可能温度,至適生育pH,増殖速度や基質利用性などを調べ、その増殖特性を把握しておく必要がある。また、これらの表現型の情報に加え、16S rRNA遺伝子およびmcrA遺伝子の塩基配列などの遺伝学的情報も、近縁微生物種との比較において重要になる。昨年度の研究で得られた分離菌株の基礎的なデータをもとに、最も増殖能力の高い南海トラフ深海底堆積物由来のMethanosarcina属の菌株を選び出し、異なる圧力条件下での増殖(圧力応答)に関するデータを収集した。水素およびメタノールをメタン生成基質として培養したところ、それぞれの基質で異なる圧力応答が示された。メタノールを基質として加圧培養すると、供試菌株の分離環境とほぼ同じ25MPaまでは常圧下よりも高い増殖能を示し、最も増殖が早かった15MPaにおける最大比増殖速度は、常圧下の2倍以上であった。一方、水素を基質として加圧培養した場合は、圧力の増加に伴い増殖が阻害された。この結果は、基質により圧力応答が異なることを顕著に示している。この原因については、現在、考察中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までの研究で、分離菌株の基礎的なデータおよび圧力応答に関するデータを取得することができた。現在、メタン炭素同位体測定システムの確立にも成功しており、培養で生成したメタンの炭素同位体比を測定する体制は整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は、南海トラフ海底底堆積物由来のMethanosarcina属メタン生成アーキアのみを主な対象として実験してきたが、今年度は基質利用特性の異なる日本海溝海底底堆積物由来のMethanobacterium属メタン生成アーキアも実験対象とする。研究の流れとしては、1)それぞれの菌株の圧力応答に関するデータを揃える、2)高圧培養において生成されたメタンの炭素および水素同位体比を網羅的に測定する、を予定している。得られたデータについては、国内もしくは国際学会にて発表後、学術論文として取りまとめる。
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