2010 Fiscal Year Annual Research Report
クーロン爆発イメージングと二次電子測定による高速クラスターイオンの近接効果の解明
Project/Area Number |
22560833
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
鳴海 一雅 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 放射線高度利用施設部, 研究主幹 (90354927)
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Keywords | 高速クラスターイオン / 固体内原子衝突 / 二次電子放出 / 近接効果 |
Research Abstract |
複数の原子が結合しイオン化したクラスターイオンが高速領域ボーア速度以上)で固体と衝突する際に誘起される二次電子放出には近接効果と呼ばれる未解明の物理過程がある。本研究ではこの近接効果の起源の解明を目的とする。これによって従来の単原子イオンによる二次電子放出の研究に新たな視点を導入し、未解明の問題の解決に寄与することが期待される。22年度は、薄膜を透過する高速クラスターイオンが誘起する二次電子数と薄膜透過後の解離イオンのクーロン爆発パターンを同時計測できるシステムを用いて、3MeV/atomのC_2^+イオンを非晶質炭素薄膜に入射させた際に薄膜の前後に放出される二次電子数と、薄膜透過後の解離イオンの配向角φ(入射ビームの方向と解離イオン間を結ぶ直線がなす角)の相関を測定した。その結果、薄膜前方(ビームの進行方向)に放出される二次電子数について、厚さ4μg/cm^2の薄膜においてはφが90度に近い場合よりも0度に近い場合の方が多いこと、より厚い薄膜についてはφによる明らかな差がないことがわかった。薄膜中での衝突過程を考慮して出射時の解離イオンの核間距離を評価すると、φによる二次電子放出数の違いは励起電子の生成過程によるものと結論づけられた。 また、クーロン爆発パターンから配向角φを決定する精度を上げるために、3 MeV/atomのC_2^+イオンを非晶質炭素薄膜に入射させた際の透過解離イオンの荷電状態と角度分布の関係をシミュレーションの結果と併せて詳細に検討した。その結果、荷電状態と角度分布は入射イオンの振動状態を反映していること、さらにこれらの情報から入射イオンの振動状態の確率分布を明らかにした。
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