2011 Fiscal Year Annual Research Report
フウロソウ属植物の不可解な分布様式を解明する、繁殖干渉理論の実証的研究
Project/Area Number |
22570088
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西田 佐知子 名古屋大学, 博物館, 助教 (10311490)
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Keywords | 繁殖干渉 / フウロソウ属 / 生物地理 / 分布 / ヒメフウロ |
Research Abstract |
本研究は、植物について気温や地質条件では説明できない不可解な分布様式を、繁殖における近縁種間の干渉によって統一的に説明することを目的とする。とくに、ゲンノショウコやミツバフウロ、ヒメフウロなど、フウロソウ属の近縁種間における繁殖をめぐる相互作用と分布の関係の解明を試みる。 本年度は震災の影響で前半期に旅費の使用を控えたため、栽培実験や分子系統解析などを中心に以下のような調査を行い一定の成果が得られた。 まず栽培実験については、全国から得られたヒメフウロの栽培を行い、石灰岩に固有の集団の種子であっても石灰岩的ではない土壌で生育可能であることを確認した。またミツバフウロとゲンノショウコの栽培を行ったが、栽培条件の設定が難しく、資源競争に関するデータを得ることはできなかった。 分子系統解析についてはヒメフウロについて、石灰岩地域に昔から自生する集団、近年自生地とは異なる全国各地でみられた集団、そしてイギリスから輸入した種子を育てて得たサンプルについて3つの遺伝子領域のシーケンスを求め、系統解析を行った。その結果、昔から自生する集団やイギリスのサンプルは近年自生地とは異なる各地でみられた集団とは異なるクレードを形成した。この結果から、近年自生地以外でみられる集団は、由来は不明だが日本固有の集団からの逸出とは考えにくいことを明らかにした。この他、フウロソウ属全体の分子系統解析については、ツクシフウロなど採集困難なサンプルの収集を引き続き行った。また、フウロソウ属のうち約10種について、3つの遺伝子領域のシーケンス解読を終了した。これについては来年度にさらに多くの種のDNAシーケンス解読を行い、分子系統解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
栽培実験や分子系統解析は着実に進行しており、ヒメフウロに関しては結果を出して論文を執筆、先日受理された。また繁殖干渉に関する論文を執筆して受理・印刷された。各地の集団に関する遺伝子データを用いた系統地理解析などの研究を進めれば、計画通りに研究の目的を達成できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はフウロソウ属の分布・生育状況調査および系統地理解析を中心に行いたい。研究遂行の上で問題点はないが、初年度は秋になってから助成が決まったこと、次年度は震災の影響があったことなどから、現地での調査がまだ十分にできていない。そこで、今後は植物の実際の分布状況や生態についての調査を行うと同時に、そこで得られたサンプルを使って系統地理の分析を行う。なお、属内の各種を対象にして調査するつもりではあるが、研究の完成度を高めるため、とくにミツバフウロとゲンノショウコ、ヒメフウロについて重点的に調査し、詳しい考察ができるように研究を進めていきたいと考えている。
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Research Products
(5 results)