2011 Fiscal Year Annual Research Report
アカサビザトウムシ種複合体における環状重複をともなう色斑と核型の著しい地理的分化
Project/Area Number |
22570092
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
鶴崎 展巨 鳥取大学, 地域学部, 教授 (00183872)
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Keywords | 種分化 / 輪状種 / 核型分化 / 中部地方 / ザトウムシ目 / 地理的変異 / 染色体 / 環状重複 |
Research Abstract |
環状重複(circular overlap)は地理的に少しずつ分化したある生物種の一連の集団がその両末端で再び分布域を重ねたときに生殖隔離を達成していて,別種としてふるまう現象で,種分化が地理的な形質分化の積み重ねで生じることを例証するものとして注目される。しかし,その実例は珍しく,また染色体数の分化がこれに関わるケースは知られていない。最近の調査で四国北部および本州中部地方の2カ所において染色体数または色斑で環状重複の現象を示すことが示唆されたアカサビザトウムシ(クモガタ綱ザトウムシ目)について,さらに核型と色斑の地理的分化を調査し,この現象がどのような過程や条件で発達するのかを探るのが,本研究の目的である。 2011年度は,長野県西部にみられるアカサビザトウムシ関東型と北陸型の環状重複を確認するため,松本市から大町市にいたる北アルプス山麓沿いで分布と染色体数の調査をおこなった。残念ながら,両者の同所的生息地として新たに確認できたのは梓川沿いの1カ所(鷺沢)のみであった。北陸型では大町市から松本市梓川までの狭い地域で染色体数が集団内多型をともないながら2n=10-18まで大きく変化することがわかった。同所的集団では北陸型が2n=12,関東型が2n=16であるが,核型は2回の動原体融合・解離では説明できないほど大きく異なっていることがわかった。 いっぽう,この北陸型と近畿地方北部の近畿型との染色体数変異の地理的パターンの把握のため,滋賀県,三重県,岐阜県で染色体調査をおこなった。新たに調査した三重県中部の布引山地で染色体数が2n=12から18まで急激にかつ複雑に入り組んで変異することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
染色体数の地理的分化パターンの把握はまだ十分ではないが,これは今回調査対象とした地域で染色体数が予想以上に大きく複雑に変異することがわかったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように,アカサビザトウムシの本州の近畿地方から長野県にいたる地域での染色体数の変化は予想以上に大きいので全貌の把握のためにはさらに数年間の調査期間が必要と思われる。今後の継続調査につなげるため,最終年度では,当初予定した,長野県と香川県の2カ所の周辺での染色体数調査を優先し,さらに時間のゆるす範囲で,これまで調査の不十分な地域(奈良県,福井県など)でも予備的な染色体数把握をおこなう。
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Research Products
(6 results)